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第429話◇

 なんか、優しいキスを繰り返されて、抱き締められて、もうぽわぽわ幸せ過ぎるのだけれど。ふ、と気付く。 「……そろそろ、もど、る?」 「――――……んー」  答えながらも、頬にちゅ、とキスされる。 「玲央……?」  ふ、と笑った唇にもまたキスされる。  名残惜し気に続けてキスされてると、笑ってしまう。 「れ、おってば……?」  その腕に手を置いて、そっと離れて――――……と思ったら、また抱き締められた。 「――――……オレ」 「……ん?」 「――――……言っておくけど」 「……うん??」  玲央の言葉を待っていると、深いため息。 「玲央?」  名を呼んで、ただひたすら、次の言葉を待つ。 「――――……オレ、こんな風に、離れたくないとか、したこと無いから」 「……」 「こんな風に、ひっついてたいとか――――……思うの初めてすぎて」 「――――……」 「つか、オレ、そう言うのマジでウザイと思うような奴だったから」 「――――……」 「……何かもう、最近自分が感じてる事が、ほんとに不思議で」  抱き締められたまま、耳元で囁かれる言葉は。  何だか、言い換えれば。  めちゃくちゃオレの事が好きだって、言われてるみたいで。  言葉が何も出てこない。  今までは、そういうのをウザイとか思ってた玲央が、初めてこんな風に離れたくないと思ってくれてるって、言われてる、て事だから。  それって、本当にすごいコトなような気がしてしまう。 「……でも、オレ、今まで自分がそういうのをウザイって思ってた感覚も覚えてるからさ」 「うん」 「――――……優月は、ウザくねえ?」 「――――……」  あ。また、そんな事、心配してる。  玲央って、今まで自分が思ってた事はオレも思うんじゃないかと、心配してくれるんだろうけど。何回か、聞かれてる気がするけど。  すっぽり包まれてた腕から、顔を上げて。玲央を見つめる。 「オレ何回も、言ってるけど」 「――――……」 「玲央をウザイなんて、思う事、無いってば」 「――――……」 「そもそも、ウザイ、がそんなに無――――……」  言いかけてた言葉は、瞳を緩めて笑った玲央の唇に塞がれた。  一気に舌が絡む。吸われて、奪われて、噛まれて。  ん、と声が漏れて。涙が滲む。 「好きだ、優月」  は、と熱い息とともに。  唇の間で囁かれて。答えるよりも早く、また、重なる。 「ん、ン……っふ――――……」  玲央とこんな風にキスするようになってから。  ……何回、キスしてるんだろう。  数えきれないくらい、キスして。  ――――……密着して。  キスでこんな風に、息が上がるとか、考えた事も無くてびっくりだったし。こんなにフワフワ浮いてるみたいになるとか。今でも不思議でしょうがないけど。 「――――……」  薄く、瞳を開けて、玲央を見つめる。  こんなに、近くで、こんなに大好きな顔。  見られるとか。幸せすぎる。

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