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第430話◇
【side*村澤智也】
優月が神月――――……じゃない。玲央。呼び慣れない。
玲央に呼ばれて立ち上がってすぐ、勇紀がオレの隣に座った。
ドアが閉まり、2人が居なくなってすぐ。
「あれ、ぜーーったい、ヤキモチ妬いたな」
勇紀が笑いながら言って、周りに同意を求めてる。
颯也や甲斐は笑ってて、稔は、絶対そう、と頷いてる。
「……ヤキモチって」
――――……今優月と話していたのはオレだから。
「え? オレにか?」
まじまじと勇紀を見つめると。勇紀が当たり前じゃんと笑った。
「玲央は絶対そんな事言わねーだろうけどなー」
「な。クールぶるから。……つか、今までの玲央は、クールぶってる訳じゃなくて、ほんとにそういう奴だったと思うけど。冷めてたもんな」
勇紀と稔が楽しそうに言うと。
「智也と優月も、話す時、距離近いよな」
甲斐がそう言って、オレを見る。
「ああ、今、スマホ見ながら話してたからじゃない?」
「まあ理由はどうにしても。近い。つか、勇紀も優月と話す時、なんか近いもんな」
「え、そう? ……気をつけよ」
勇紀が苦笑して、そんな風に言うと、稔も可笑しそうに笑う。
「まあでもさ、玲央はカッコつけるから、絶対ヤキモチなんか表に出さないと思ってたけど……その内、出しそう。もーキャラ変わりすぎだっつの」
そんな台詞に、皆も口々に同意して、クスクス笑ってる。
「なあ、あのさ」
オレは、ちょうど玲央も優月も居ない所で、聞きたかった事を聞いてみることにした。
「優月との事って、反対してる奴は、居ないの?」
言った瞬間。皆キョトンとして、オレを見て。
「それは男だからって事?」
稔が聞いてくる。
「まあ、そう、かな。 バンド的にも良いの?」
皆、ああ、なるほどね、と言った感じで少し笑う。
「そう言う意味なら別に、て感じだよなー?」
勇紀が甲斐と颯也を見て、そう問いかけると、2人はすぐに頷いた。
それを見て、勇紀はオレに視線を向ける。
「オレらまだ、バンド続けるかも決めてないけど――――……とりあえず今のファンは、今までの玲央を知ってても、ついてきてるファンだから平気だろうし。むしろ1人にしたって事で、歓迎モードなんだよね」
「それに今時、そんなの、拒否の理由にしたら、そっちのが責められるんじゃねえ? 大丈夫だと思う」
颯也も、笑いながら言ってくる。
「心配なの? 優月の事」
甲斐に聞かれて、心配……と呟いてから、首を振った。
「優月はオレが心配しなくても大丈夫。オレが勝手に気になっただけ」
そう言うと、勇紀が、ふ、と笑った。
「分かる。優月って、心配したくなるけど――――……しなくても、平気だよね」
「ああ。そうなんだよな……」
「なんかふわふわしてて心配な感じするけど、話してると、全然惑わされないし、まっすぐ、なんつーか…… 自分が大事だと思う物を、ちゃんと大事にする感じ、かなあ」
「――――……」
何となく、優月の事を、他の奴がこんな風に分かってると。
ちょっと嬉しい。
「つーか、玲央がさ、全然キャラ変わってて、キモイんだけどさぁ」
稔が言い出して、皆が苦笑い。
「でも……すげー嬉しいよな。あんな風に誰かを好きな玲央、初めて見るし。楽しそ―だし」
そのセリフに、ついつい、マジマジと稔を見てしまう。
あ、そういう風に、思ってたんだ。
めちゃくちゃ、からかってると思ったら。
「――――……お前、良い奴なのな」
クスクス笑ってしまいながら言うと、稔が、やめろ、と笑う。
玲央が、どんだけクールだったかみたいな話が面白可笑しく始まって、そんな話を聞いていたら。扉が開いた。
玲央と。その後ろから、優月。優月だけちょっと、気まずそう。
「おかえりー」
勇紀の声。こういうのはこいつの役目なんだろうな。
「何してきやがった、お前」
稔のセリフ。――――……これも、もはや、こいつの役目な気がする。
「ただいま」
優月は、ふ、と笑みながら、オレの隣に座る。
「――――……玲央の隣じゃなくて平気?」
ついつい聞いてしまったら。
え。と優月が固まって。一体何を聞いてたんだろうという顔で、パチパチ瞬きをしている。
玲央も何だかうるさい周りに苦笑いしながら、さっきの所に、座ってるし。
まぁ。優月補充して、落ち着いたってとこなのかな。
なんかオレも、気になってた事、なくなったし。
――――……もうあとは、優月がどう恋してくのかっていう、普通の恋愛の話だって、美咲にもそう伝えればいいよな。
早く、美咲も安心させてやろ。
「やっぱり今日来て良かった」
「――――……そう?」
ふふ、と、優月が嬉しそうに笑って。
オレも頷いて、ふ、と笑んだ。
(2022/3/20)
智也sideおわり♡
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