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第431話◇
【side*玲央】
ふと、時計を見ると、22時半を過ぎていた。
結構長く居たな。
――――……最初は優月を隣に座らせたけど、その後は離れて。
一旦外で、触ってキスしまくったけど。
よくもずーっとこんなに楽しそうにしてられるものだなと、周りを眺める。
特に稔と勇紀はずーっと同じテンション。ある意味すげーけど。
で、優月はそこまでのテンションじゃないけど、なんだかポワポワとしたまま、それでも何となくあのテンションに巻き込まれるというよりは、自分の感じは保ったままで、なんだかとても楽しそうに笑ってる。
……可愛い。
とか。思いながら、見ていると。
隣で颯也が、笑い出した。
「あ? 何?」
「――――……お前が優月を見る目ってさー」
「……何」
「何て言うんだろ。……そんなに、好きか?って、聞きたくなるっつーか」
「――――……」
「もう好きでしょうがないんだろうなーと、ツッコミたくなるっつーか」
口元を軽く握った手で押さえて笑いながら、そんな事を言ってくる。
「まさか、そんな類の事をお前に思う日が来るとは思わなかった」
「――――……つか、オレそんな顔してるか?」
「してる」
稔に言われるなら、してねーと言い返すのだけど。
颯也は冗談じゃなく、そう思ってるんだろうなと思ってしまい、特に反論が出てこない。
「まあ……オレはすげー良かったなと思ってるけど」
「良かった?」
「だってお前、元はちゃんと付き合おうとしてたじゃん。昔さ」
「――――……」
まあ確かに。最初の頃は、ちゃんと恋人、作ってた。
「すげー遊び人ぽい見た目ではあったけどさ、昔から」
「るせ」
ツッコむと、颯也がクスクス笑う。
「……見た目に反して、ちゃんと誰かと付き合おうとする奴なんだなーと思ってたのに、なんか段々おかしくなってってさ」
「――――……」
「遊んでたけど、でも別にそれが心から楽しいとは思っていなそうな感じでさ。なんかむしろ、全部めんどくせーって、なってたような……」
「――――……」
「なのに、書く曲は一途なのとかも書くし、ほんとはこっちなんじゃねえのかなと思ってたからさ」
そんな風にそこ、つっこまれると、なんか、すげー恥ずかしい気がする。
「だから、一途になっても応えてくれて、穏やかに居られる相手が出来て、ほんと良かったなーと、オレは思ってンだよな」
「――――……お前、ハズい」
言うと、そーだな、と颯也が苦笑い。
颯也の隣で黙ってた甲斐も、オレをまっすぐ見て。
「でも、オレもそー思う」
そう言って笑う。
「なんか、オレも誰か1人に決めようかなーと、ちょっと思う位。最近の玲央は楽しそうに見えるしな」
甲斐がそう言うと、颯也は真顔で甲斐を見つめて、「お前も早くそーしろよ」と一言。はいはい、と甲斐が苦笑してる。
何だかなあ。
……もう面倒だと思って楽しく遊んでたつもりが。
そんな風に周りにも思わせていたのかと思うと、何だか複雑だけど。
視線の先で、楽しそうな優月を見てると不思議な気分になる。
少し前では、こいつらとの空間にも存在してなかったし。
オレの世界のどこにも、全く居なかったのに。
今は、オレの世界全部の、一番中心に居るって。
ほんと不思議ではある。
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