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第434話◇
「小学校とかもちっちゃかったし、なんか……のろかった、みたいで。美咲によく、とろいんだから、て言われてた」
懐かしいなあ、なんてほわほわ笑ってるのを見てると。
何だか、愛おしくなってしまう。
何となく黙ったまま。手を繋いでゆっくり歩いてるのが、何だかすごく、幸せな気がするって、本当に不思議だし。
「「今度さ」」
少しの沈黙の後、優月と言葉が重なった。
ちょっと驚いて、顔を見合わせて。笑いながら。
「いいよ、何?」
優月のを促すと。
「今度ね、玲央の小さい頃の写真、見たい」
と言ってから、「玲央は何て言おうとしたの?」と聞いてくる。
「オレも、優月の見たいって言おうと思った」
「え、ほんとに?」
「ほんと。 可愛かったろうなーと思って」
そう言うと、どうだろうね、と、優月が笑う。
「じゃあ見せあいっこしようね」
「――――……まあ、オレは、そんな可愛くないけどな」
「もしかして、小さい頃から、カッコよかったって事?」
そんな事まじめに聞いてくるから、笑ってしまう。
いや。生意気なクソガキだった記憶しかない。とは言わないけど。
「優月の可愛いとは別次元な気がする」
とだけ言うと。よく意味が分からないみたいで、ふうん……?と不思議そうに返事をしている。
――――……ほんと、可愛い。
「でも、なんか思うんだけどね」
「ん」
繋いだ指に、少し、きゅ、と力がこもる。
ふと、優月に視線を向けると。
「小さい頃に玲央と会ってたら、こんな風になってなかったと思う」
「――――……」
「今のタイミングで、会ったから、こうなれたような気が、する」
「――――……そう思う?」
「うん。――――……何となく、そう思う」
優月はにっこり笑って、オレを見つめる。
「――――……」
いつ会っても、優月の事は、嫌いじゃないと思うけど。
でもたしかに、幼稚園とかで会ってたら、なってないかも。
小学校で会ってもなってないな。
中高とかで会ってても――――……もし興味持って、関係持ったとしても、そんな長続きしなかったかも。
色んな奴と付き合って、嫌な事とか、求めてる事とか、できあがってきて。
優月も、色んな事頑張ってくるうちに、こういう奴に、なってて。
――――……で、このタイミングで、今のオレと優月が会ったから。
ぴったり、はまった、ような気がする。
「あー……そう、だな。……オレも、そんな気がする」
「うん」
「今で良かったな。……早くも遅くもなくて」
「うん」
何だか、すごく嬉しそうに、優月が笑う。
「今の玲央が、大好きだから」
とか言って、でっかい瞳でまっすぐに見つめてくる。
――――……どんだけまっすぐ、物言うんだ。
なんかほんと。
こんな緩くて。
のんびりで。
なのに。
勝てる気がしない。
やられっぱなしな気がするし、それでいいような気が、してしまう。
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