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第437話◇
「――――……」
なんとなく、気配を感じて、閉じていた瞳を開くと。
優月、瞳を閉じないでじっと見てる。
キスしながら、見つめ合う。
すげー可愛いんだよな、これ。
でもって。
「……っ」
見つめ合いながら、オレが少し瞳を細めると。
すぐ、もう無理になるみたいで、ぎゅっと瞳を閉じる。
口の中、そんなにきつくなく、優しく触れて。
舌を絡めて、甘いキス、繰り返す。
「……ン、ん……」
それでも、息があがってきて。ぎゅ、とオレの服を握る。
その手と繋いで、玄関に軽く、押し付けて。
また深く口づける。
「――――……」
今迄、無いんだよな。
優月としたいと思う事。
今まで、他の誰とも、したいと思わなかった。
こんな風に帰ってすぐ、外で出来なかった分、キスしたいなんて事も。
これ、延々、ずーっとキスしてられるなと、思う事も。
見つめ合うと照れて、ぎゅっと瞳を閉じるそれだけの仕草が、こんなに、愛しいとか、思う事も。
なんかもう。
くっついて、溶けて、ひとつになっちまえばいいのにとか。
――――……とても口には出せないような事も、普通に、浮かぶ。
オレにとって、恋愛とかは遠いもので全然意味も分からないし、別にそんな感情なくても、ただ気持ちいい事できればいいやと思っていたのに。
可愛いとか愛しいとか思ってすると、もっと気持ちよくなるんだって事も。
優月とで、初めて分かった。
だから今日も何か色々言われてたけど……。
普通に考えて、オレが優月を可愛いと思ってる限り、他の奴に行くとかは無いだろうなと思ってる。
優月を素直に愛せなくなるかもとか、優月がまっすぐにオレを見れなくなるかもとか。そっちの方が、絶対きついと思うから。
体だけ重ねてても全然満足できていなかった事も、今となっては、分かってるし。
「……ん」
ちゅ、と最後に舌に触れて、ゆっくりと離す。
頬に触れて、じっと見つめると。
おわり?という顔で、ぼーー、とした優月が瞳を開ける。
「――――……優月」
「……うん?」
「キス、息できるようになってきた?」
くす、と笑って、頬にキスしながら言うと。
「んー……? ……今の感じのなら、ちょっとは吸える、かなあ……」
ふふ、と笑いながら、答える優月。
「……吸うだけ? 吐くのは??」
「――――……吐くのって、むずかしくない?」
見上げられて、可愛いと。感じるとか。
――――……大体、オレより背の低い奴としかした事ないし、見上げられるなんて、いつもの慣れた事なのに。
「何でお前は、そんな、可愛いの」
「――――……」
急に漏れた心の声に、優月は、数秒固まって。
何か言おうとして口を開けた後。言えずに、かあっと赤くなった。
「…っそんな事、まじめに言わないでよ……恥ずかし――――……」
ああ、玄関でずっとキスしてるのもなーと思って、せっかく離してあげたんだけど……。
ダメだな。可愛すぎ……。
オレは、真っ赤な優月の顎を捕らえて、キスして。そのまま、抱き込んだ。
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