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第467話◇

 うー……。  なんか、ぽわんぽわん、というか。  ――――……よく分からない感覚にずーっと、支配されてるみたい。  何とか、必要な物を考えて、鞄に詰めてはいるのだけど。  ……何を忘れてっても、全然不思議じゃない位。なんか、ずーっと、ぼーっとしてる。  なんかさっき。  めちゃくちゃ、気持ち良くて。  ……なんかオレ。  ――――……そういう事、少し慣れてきたというか。  恥ずかしいのとか、気持ちいいのとか、今まであんまり感じてこなかった感覚を、玲央と会ってから、ずっと、感じさせられてて。  その感覚を、何でもない時にまで、急に思い出したり。  ……うーん……。  ――――……さっき。玲央が、あそこで「やめてくれた」のは、分かってる。  それは多分、最後まですると、オレが使い物にならなくなっちゃうから。……分かってるんだけど。  ……ううー。  玲央と、最後まで、したいなとか。  絶対、このポワポワした感覚は、それなんだと思う……。  まだ足りない。  ――――……とか。  ……い、言えない。  ……………………言える訳ない。 「優月、なんかこれだけは自分のが使いたい、とか、そう言うの無い?」 「……」 「優月?」 「あ、うん。 え? ごめん、何?」  遠くで聞こえてた声。はっと気づいて、そう言うと、玲央がクスクス笑いながら、オレに近付いてきて、頬をぷに、と摘まんだ。 「ごめんな、なんか優月、ぼー、としてンな?」 「ううん、ごめん、聞いてなくて」 「まあ……オレのせいだろ」  クスクス笑いながら、頭をよしよしされる。 「オレの家にあるもので用が足りるなら良いんだけど、これだけは自分のが良い、とか。そういうの、無いか?」 「……えーと……」  これだけは自分のがいい……えーと……絵の道具は持ったし、学校の物も持ったし、あとは、何だろう。 「無いかも、あんまりそういうの」 「無いの?」 「そう言うわれてみると、あんまり、これじゃなきゃっていうものは無いかも」  これでもいいけど、こっちでもいいし、あっちでもいいし。  ……みたいな感じかも。 「絵を描く道具は、使いやすい、とかはあるけど……」  うーん、あったかなあ、他に。  と、考えていると。視線の先で、玲央がクスっと笑った。 「優月ぽい」 「え?」 「これじゃなきゃ無理、とか。言わなそうだもんな」 「……そう?」 「ん。お前、言わないだろ?」 「……うん。言わないかも」  玲央が、目の前で、ふ、と笑って、オレの頭をまた撫でる。 「何かそういうのあったら、全部言って良いからな」  優しい表情で、クスクス笑う玲央。  言っていいから、かぁ……。  ――――……別にオレ、我慢して、どっちでもいいって言ってるとか、そんなつもりはないんだけど。でもまあ、玲央もきっとそこまで考えて言ってる訳じゃないと思うけど。  ――――……でもなんか。  目の前で優しい顔で微笑んでくれてる玲央を見てたら、ふっと思いついた。 「……オレね、玲央」 「ん? 何かあったか?」 「うん。あの……」 「ん」  口角をちょっとだけ上げて、瞳を緩めて。  オレの言葉をじっと待っててくれてる玲央を見上げてると。 「……玲央じゃなきゃ、やだ」 「え?」 「一緒に居てくれるのは……玲央が、良いな」  なんか。こんな風に、思うの、初めて。  それだけは譲りたくないな、なんて、こんな風に思うの。  じっと、見つめてたら。玲央が完全に真顔になって。ちょっと、顔を引いた。 「――――……お前……」  なんか玲央が複雑な顔をしたと思ったら。  急に、しゃがみこんでしまって。 「え。……れお???」  そのまま後ろにおしりをついて、膝を立てて。完全に顔は下で。なんか、頭を抱えるみたいな。  あれれ。  ……なんか言ってくれると思ったのに。座られちゃった。 「れお……??」  嫌だった……わけじゃないよね? と、ちょっぴり不安になりながら、オレもしゃがんで、玲央の顔を見ようとした瞬間。  腕を取られて、引き寄せられて。ぎゅ、と抱き締められた。  ――――……きつく抱きしめられてしまったから、顔は。見れない。 「…………不意打ちすぎ」  はー、と。  深い深い、ため息が聞こえる。 (2022/5/9) 昨日ブログ更新してます(*'ω'*)♡

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