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第475話◇
「近隣のライブハウスでよくやってるし、ライブとかで見てくれたのかもな」
「んー、オレは、すごい人と一緒に居る気がしてきた」
「何だよそれ」
玲央がクスクス笑いながらオレを見る。
間に鉄板があるし。すぐ近くに別のお客さん達が居るし。だからだと思うんだけど、玲央、ここに入ってからは、オレには触ってない。
そのせいで、距離を置いて、玲央を見てると。
うーん……。
やっぱり、カッコ良すぎ。玲央。
この庶民的な空間で、とっても浮いて見えるんだけど。ほんと目立つ……。
気づけば、周りの人、ちらちら玲央を見てるし。
さっきのやり取り、店員さんが泣いていたのも大声で泣いてた訳じゃなかったけど、結構見られてたもんね。きっと玲央がそういう芸能人か何かだって事も含めて、皆気になってるんだろうなーと……。
――――……鉄板があって、ちょっと離れてて、良かった。
ここで、いつもみたいに撫でられると、それこそ、ものすごく見られそう。
なんて思っていたら。
つん、と足先、玲央の足とぶつかった。
「あ、ごめんね」
言って、少し引いたのだけれど。
くす、と笑った玲央は。オレの足につんつん、と触れてくる。
「…………」
ぶつかったんじゃなくて、わざと、か。
玲央は、何だか楽しそうに微笑んでいる。
……ちょっと子供っぽい顔してる。……可愛い。
つんつん、とし返すと、ふ、と玲央が笑う。
ああ、もう。ほんと、こういう時、可愛いな。
……って、めちゃくちゃカッコいい人だけど。
とその時。
「お待たせしました」
現れた店員さんが男の子で。あれ、と見てしまう。
見た瞬間目があって、その子がすぐに、すみません、と言った。
「泣いて帰ってきたので話を聞いたんですが……大ファンだったらしくて。本当に、ご迷惑かけました」
「迷惑なんてかかってないですよ」
ね、と玲央を見ると、玲央も頷いている。
「泣かずに運べそうにないというので、今は、キッチンに入ってます」
苦笑いを浮かべてる男の子の店員さんに、オレ達も笑ってしまう。
そうなんだ。泣く気満々なんだね。
オレだったら、絶対運びたいって思うけど……それも出来ない位、大ファンって事なのかな。
「あとで、お会計だけ、させて頂いてもよろしいですか?」
そんな風に聞かれて、オレが玲央に視線を向けると、玲央も頷く。
「ありがとうございます」
そうお礼を言ってから、簡単に商品の説明をして、離れて行った。
「――――……オレならね」
「ん」
「オレなら近くに行きたいし、話したいから、絶対持って来るんだけど……」
「そっか」
うん、と頷きながら。置かれて行ったお好み焼きに視線を向ける。
「玲央、焼こうか」
「ん。どーやんの?」
「じゃあ玲央こっち焼いてくれる?」
「ん」
玲央にミックス玉のお皿を渡して、オレは豚玉。
「じゃあ、混ぜて下さーい」
「ん」
玲央が、オレの真似っこして、ぐるぐる混ぜてる。
――――……ふふ。やっぱり可愛い。
「混ざった?」
「多分」
「そしたら、ここにまーるく……」
鉄板の右半分の所に、お好み焼きのタネをまぁるく乗せる。
「こんな感じ」
「分かった」
玲央が、同じようにお好み焼きを鉄板に広げる。
「でね、豚肉は上に乗っけるの」
よけといた豚肉を上に乗っけて、お皿を置いた。
「これでしばらく待ちまーす」
「ん。――――……初めて置いた」
玲央がお好み焼きを見つめながら、そんな事を言ってる。
――――……なんか。とっても、可愛く見えてしまう。
「あ、優月、空いてる所でこっち焼く?」
「あ、うん」
鉄板焼きのメニューで頼んだお肉や野菜を、空いてる所に並べて焼きながら。
何か、笑ってしまう。
「……楽しいね」
言ったら、玲央は、ふ、と笑う。
「なんかさ。さっきの子さ。泣いちゃうから持ってこれないとか……ほんとに、すごいファンなんだろうね」
うんうんと頷いてると、玲央がオレを見て、クスクス笑った。
「嬉しそうだな?」
「うん。なんか。玲央のファンとか……嬉しいよね。ファンがいっぱい居るのはライブの時にも見たけど」
「オレが人気ある方が嬉しい?」
「ん、嬉しいよ。すごいなって思う」
「妬かない?」
「……妬くのとは違うような気がするけど」
首を傾げながらそう言うと。
「そういうのに妬く子、結構居たから」
苦笑いの玲央。
「……そうなんだ。……そっか。うーん。玲央って……」
「ん?」
「モテすぎちゃうって、ほんと大変だね?」
しみじみ思って、しみじみそう言ったら。
何秒が、顔をマジマジ見られて。
ぷ、と笑われて。
足先でまた、つんつん、とつつかれる。
「――――……今は優月と居るから、大変じゃないよ」
クスクス笑う玲央の笑顔が。
なんか、めちゃくちゃ優しくて。
好きだなぁ、と。思う。
多分、今までの子達も、きっと玲央の事を大好きすぎたから、そうなっちゃってたんだろうなあ、と、勝手にすごく、理解してしまう。
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