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第476話◇
「多分さ、玲央」
「ん?」
「……その子たちってさ、きつと、玲央のこと、すごく、大好きだったんだと思う」
「――――……」
「……だから、あんまり嫌がらないであげて、ほしいかなあ……」
「――――……」
思ったまま言ってしまったら、すごくびっくりした顔をされてしまった。
「あ」
うう。またしてもまたしても、変なこと言ったかな、オレ。
なんかよく、玲央がびっくりしたみたいにオレを見るんだよね。
なんかいつも、変なこと。言ってるのかな、オレ。
「……っあ、ごめん。……別に玲央を責めてるんじゃ、なくて……」
「――――……」
「……だいすきな気持ちはすごく分かるなーと思ったら……ごめん、なんかオレ、余計な事言ってるかも……」
黙ってたけど玲央は少しして、困ったように苦笑い。
「――――……オレが優月みたいに、思えてたら」
「え?」
「……もうちょっと、違う風に付き合えてたかもな」
そう言って、玲央が、肩を竦める。
「オレの事大好きだから、とかは思えなかった。――――……オレを信じられないんだなって、思ってたから……」
「――――……」
「……オレの態度も、悪かったから、ああなってたのかも。って、今、初めて思ったかも」
ふ、と苦笑いしながら、息をついて。
「――――……んと……あ、でも……玲央だけが悪かったとかじゃないし」
「ん?」
「喧嘩になっちゃってたんなら、お互い様だし……あの……」
「……何? フォローしてる?」
クスクス笑う玲央。
「フォローとかじゃなくて……」
ちょっと困っていると、玲央が片手をひらひらして見せた。
「大丈夫。分かってる。今よりもっと子供だったし……オレが付き合ってた子達をちゃんと好きだったかと言われると、何となく付き合ってただけの気もするし……」
「――――……」
「そういうのも全部含めて、色々うまくいかなかったんだと思うよ」
言いながら、玲央が、お好み焼きのヘラを持って、裏側を覗く。
「……優月、これひっくり返す、よな?」
「あ、うん。ヘラ2個もって……」
オレは、お好み焼きの両サイドからヘラを挿しこんで、うまくくるん、と回転させた。
「優月うまいな」
「ありがと。玲央も出来ると思うけど」
クスクス笑いながら、オレはヘラを玲央に渡した。
何か真剣。
「いつも料理してくれるのに。どうしてそんな緊張?」
何だかとってもかわいく見えて、笑いながらそう言うと。
玲央も苦笑い。
「ヘラを2つ持つのも初めてだし。変な感じだから」
言いながらも、さすがの玲央はうまくひっくり返して、おお、とちょっと喜んでる。
「玲央、さすがー」
「さすがってのも変だろ」
「何でも出来る気がするから。玲央」
ふふ、と笑ってそう言うと、玲央も、可笑しそうに笑って。
「なんか吹っ飛ばしそうで、緊張した」
「お好み焼きを?」
「なんか両手、力入りすぎて?」
「飛んでったら面白かったけど」
「まーそうだな」
玲央は笑いながらヘラを置くと、菜箸に持ち替えて、脇で焼いてるお肉をひっくり返す。
「もう焼けたから皿貸して?」
「うん」
お皿を持って、前に出すと、玲央が野菜とお肉を乗せていってくれる。
「美味しそう~」
玲央も自分の所に乗せて、何つけて食べる?と聞いてくる。
「そこに塩があるー。塩付ける」
「ん。何種類かあるけど。どれがいい? 抹茶と梅とゆずとレモンだって」
「全部。順番に」
玲央は、クスクス笑いながら、「じゃあ抹茶から」と渡してくる。
抹茶塩をかけすぎないようにそっとかけてると。
「まあさ。反省するとこ色々ありそうだけど」
玲央が、また苦笑しながらそう言って。
それから、くす、と笑ってオレを見つめた。
「優月とは、失敗、しないようにする」
「――――……」
「大事に、してくから」
なんか。ものすごく、照れくさい事を。
まっすぐに見つめて言われて。
もう、ひたすら、瞬き、多くなる。
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