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第489話◇

 バスルームから出てきた優月は、ほこほこしてて、可愛い。  細い首筋にキスしたい。とか。朝から思ってしまうけど。  なんかまだ、顔がというか、口もとが、ぷっくりしてる。ちょっと困ってるみたいな顔。……可愛い。  オレは先に席に座って、コーヒーを飲んでいたのだけれど。優月のその様子に、ぷ、と笑ってしまうと。 「ね、玲央。さっきの続き、話してもいい?」 「ん。いーよ」  優月は、オレの隣に座って、じっとオレを見つめてくる。 「玲央もね、夜一緒に起きてるのに……ていうか、オレの事、拭いてくれたりしてオレより遅いのに、朝起きてるでしょ」 「……まあそーだけど」 「いつもスマホ置いたままベッドに行っちゃうから、今日から、目覚まし、セットしてもいい? オレも一緒に起きたい。ご飯の用意一緒にしたいし」  優月は、そう言って、テーブルの上の料理をじっと見ている。  まあ分かるんだけど。言いたいことは。  んでもなあ。 「優月」  ふに、と、まだ暖かい優月の頬に触れる。 「オレ、お前と食べるもの作るの、全然苦じゃないし。むしろ、楽しいくらいだし。……でもって、夜の疲れるのは、多分お前のが疲れる、と思うんだよな」  優月が、面白い位に真っ赤になるのを見てると。  なんだかもう、可愛くてたまらなくなる。 「シャワー浴びたての優月、隣に置いてご飯食べるのが、結構幸せなんだけど。……ダメ?」  じっと見つめて、そう言うと。  めちゃくちゃドキドキしてますって顔して。  瞬きパチパチして。 「だめ、とかじゃ、ない……けど……」  頬から項に手を滑らせて、優月を引き寄せる。  唇を重ねて、そのまま至近距離で見つめると。  まっすぐな大きな瞳が、可愛くて。  ちゅ、と瞼にキスして。 「まだ優月、ああいうことに慣れてないし。いつも、落ちるみたいに寝るだろ。……その内慣れて、自然と目が覚めるようになったら、一緒に起きる。ていうんでいい?」 「……玲央、それでいいの?」  むー、と困ったみたいな顔で聞いてくるけれど。 「それが、いい」  はっきりそう言って、すりすり頬に触れると。 「――――……分かった。なるべく自然と起きれるように……早くなるね?」  その言葉には、苦笑いが浮かぶ。  優月がそうするために、オレがすべきことは。  なるべく負担かけないように抱いて、なるべく早めに寝かせてやればいいんだろうけど。……できる自信が無い。 「いいよ。ゆっくりで。オレ、お前がすやすや寝てんのも可愛すぎるし、寝起きも可愛いし、全部ずっとそのままでいい位だから」 「――――……」  もはやよく分からない、と言う感じの表情でオレを見て、優月がちょっと困ってる。 「とりあえず、食べようぜ?」 「あ、うん」  くる、と前を向いて、優月が頂きますと手を合わせてる。 「美味し、スクランブルエッグ」 「だろ」  めちゃくちゃ嬉しそうに笑う優月に、ふ、と笑んでしまう。 「朝、起きれない内は、オレに世話されててくれたらいいし」 「……ありがと」 「夜は、その分付き合えよな」  また赤くなるのかなあと、ちょっとイタズラ心でそう言うと。  案の定恥ずかしそうな顔をして、でも、こくこく、と頷いてる。 「……ほんと、かわいーな」  よしよし、と撫でてやると、恥ずかしそうなまま、でも、嬉しそうに、ふわふわと、笑う。  朝から、ずーっと可愛いぞ。  ……何だこれ。ほんとに。  よく考えたら、すやすや寝て、息してるだけで可愛いからな……。  ――――……人って、こんなに可愛いんだな。

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