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第495話◇

「なー、玲央、カラオケ行かない?」  不意に言う勇紀の言葉に、首を傾げる。 「行ったじゃんか」  そう言った所で、ドアが開いた。 「おーす……相変わらず、玲央が早ぇし」 「驚かないよな、もう」  甲斐と颯也が笑いながら入ってきた。 「一限は?」 「終わったけど、オレら二限休講」  苦笑いの颯也に、甲斐が肩を竦める。 「夏のライブ行きたいとこ、探してみようぜって、ここ来たとこ」 「おー、いいね。よろしく。オレも後で探してみよ。行きたいとこ、色々あるよね」  勇紀が笑ってそう言ってるのを見て。 「あぁ、カラオケ、何なんだ?」  そう聞くと勇紀が、オレを見て、あーだってさーと苦笑い。 「カラオケ行ったけど、全然歌ってないじゃん。玲央が一曲歌っただけでさ。ライブだったから今週練習入れてなかったしさ。カラオケ行きたいなーと思っただけ」  そういえば歌ってなかったな、と思う。  優月が居ない間、ジムでも行こうかとも思ってたけど――――……。 「今日ならいーけど」 「あれ。優月は?」 「クラス会だって」 「ああ、そうなんだ。じゃあちょうどいっか。二人はどーする?」 「カラオケか。いいけど、飯食えるとこにして」 「こないだんとこでいーんじゃね? 美味かったし」  颯也と甲斐も乗り気みたいで、決まった。 「予約できるか聞いとく」  甲斐の言葉に頷いて、オレと勇紀は立ち上がった。 「誰か呼ぶ?」 「任せる」  甲斐に答えて、勇紀と部室を出た。  部室の棟を出て歩きながら、勇紀はオレを見た。 「なあ、玲央、夏休みの話、優月とした?」 「あぁ、話した」 「何て言ってた?」 「……行って良いの?て言ってた。邪魔じゃないの?とか」  そう言うと、はは、と勇紀が笑いながら、「優月っぽいね」と言う。  いいのかなと迷ってた優月の顔が浮かんできて、そーだな、と笑ってしまう。 「優月とどっか行こうとかいう話から始まったからって、言っといた」 「うん。そだね。喜んでた?」 「――――……明日から夏休みでも良いって、言ってたぞ」 「あははー。かーわいい」  勇紀が楽しそうに笑いながら言って、そうだよね、と頷く。 「優月にとったら、初めての恋人と過ごす夏休みだもんね」 「――――……」 「まあ、相手は、可愛い優月を汚す男だけどね」  やれやれだな、と言いながら、勇紀がクスクス笑う。 「まあでもさ、何かオレ、ちょっと思うんだけど、優月ってさ」 「ん?」 「どんなに汚されても、優月は、そのまんまな気がするよね」 「まあそうだな――――……って、汚さねーから」  危うくスルーしてしまうところで、ギリギリ突っ込むと、勇紀はおかしそうに笑う。 「つか、オレは汚してるとかじゃなくて」 「……なくて?」 「――――…可愛がってンだよ」 「――――……」  勇紀がポカンとして、アホな顔でオレを見てるが。 「じゃーな、オレこっち」  勇紀にそう言うと、あーもー、玲央ってば、とぶつぶつ言ってる。が、放置を決め込んで、歩き出した。 「――――……」  抱いてる時の優月を思い出すと。  愛しくなる。  超可愛がってんだよな、オレは。  ――――……こんな風に思いながら、すんの、マジで初めて。  

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