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第497話◇
一限も二限も終わって、昼食もあと少し。
玲央に「もうすぐ食べ終わるよ」と入れると、「オレももうすぐ行く」「あのベンチの所で会ってコンビニ行こう」と返って来たので、分かったという了解のスタンプを押した。その瞬間、あ、と気付く。
またハムスター押しちゃった。似てるって言われたやつ……。
少し経って、「また似てる」と入ってくる。
あ。また入ってきた。
本気で似てると思ってるのかな。不思議。
そういえば玲央は、肉食獣……。カッコいいから良いけど。
ふ、と笑んでしまいながら、「似てないけど」というメッセージと、笑うスタンプを押す。それから「すぐいくね」と入れてスマホをしまうと、隣の友達にクスクス笑われた。
「優月、笑ってる」
「……あ。うん。ちょっと面白くて笑っちゃうんだよね」
あはは、と笑ってしまうと。
友達は、何が?と聞いてくる。
「んー……ハムスターのスタンプ押したら、似てるって言われて」
「どれ?」
そう言われたので、さっき送ったハムスターを見せると。
ぷ、と笑われて、まあ分かる、と言われた。
分かるんだ、とちょっぴり不思議気分になりながら、苦笑い。
「オレ、こんなにふわふわのもこもこの生き物じゃないけどね」
「んーまあ毛はないけど」
「なにそれ」
クスクス笑ってしまう。
「目が似てんじゃない? なんかくりくりしてるし」
「……ちょっと、似てるって言った人に聞いてみるね……?」
「あぁ、分かったら教えて」
「うん。楽しみにしてて」
お互い可笑しくて笑ってしまいながら、うんうん言い合ってから、オレは立ち上がった。
「ちょっと猫のとこ行ってくるー」
言うと、周りの友達が、また行くの、と笑ってる。
うん、また行ってくるねと笑い返し、トレイを持って、歩き出した。
――――……なんか歩き出すと、一歩ずつ、玲央に近付くみたいで、嬉しくなる。
お昼一緒に食べればよかったかなあ。
……でもなー。あんまりオレとばっかり居てもなあ。……やっぱりお昼位は、違う人と食べた方がいいよね。
じゃないとほんとに、毎日毎日、三食全部になっちゃったら、さすがに、ちょっぴり飽きられちゃうかなあ。……あ、でも、オレは飽きないと思うけど。
いつも玲央と離れているとそうなように、一人で色々考えていたら。前方に玲央を発見。
途端に嬉しくなって、結構遠くだけど追いつこうと、走り出した瞬間。
玲央に手を振って、近づいて行って、玲央の腕に触れる女の子。
「――――……」
ぴた、と足が止まった。
玲央とその女の子も足を止めて、話してる。
えーと……。
どうしよう、今、行かない方がいいよね。
戸惑っている内に、いつのまにやら、玲央の腕からその女の子は、腕を引いてた。
――――……。
しばらく話してる、女の子と玲央を見守る。
楽しそう。
――――……特に、女の子が。
玲央の事、大好きなんだろうなーと、思ってしまう。
分かる。
――――……カッコいいし。優しいし。
……立ってるだけであんなに素敵な人、いないよね。分かる……。
玲央が何か言いながら、指で今から行く方向を示してる。
女の子は、少し残念そう。
二人が別れて。
オレは、少しだけ、さっきの勢いはなくなってて。どうしようかな、走ろうかな。
思いながら、少しゆっくり、玲央の後を歩いてたら。
玲央がふっと、振り返って、こっちを見て、オレを見ると同時に立ち止まって、こちらにまっすぐに体を向けた。
優月
そんなに大声だしてない。声は聞こえてないけど。
何となく、名前を呼んでくれた感じは分かる。
何より、オレを見た瞬間、ふっと優しく笑んでくれて、まっすぐ、こっちを見て、止まってくれた。
なんだか、急に嬉しくなって、玲央に向かって、駆けだした。
――――……大好き、玲央。
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