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第498話◇
「ちょうど良く会えたな?」
「うん」
近づくと、ぽん、と頭に玲央の手が乗る。少し撫でられて、そのまま一緒に歩き始める。
ほんと、自然と撫でてくれるなぁ、玲央。そう思いながら、微笑んでしまっていると、玲央に見つめられる。
「今オレだって気付いてた?」
「え?」
「前歩いてるのオレだって気付いた?」
「あ、うん」
頷くと、玲央が微笑んで、オレを見下ろす。
「優月来るかなと思って振り返ったら、ぼーとしてるから、気づいてないのかと思った」
「玲央は、後ろ姿でも絶対分かるよ」
「そう?」
「うん。カッコいいから」
「――――……」
きょと、と見られて。
「お前はほんと何も考えず、そーいうコト言うんだな」と笑われる。
それから、玲央が少し首を傾げてオレを覗き込んだ。
「なあ、もしかして、オレが女と話してるの、見た?」
「――――……」
う、と思いながら、玲央を見上げる。
「……うん、後ろに居た、から」
そう答えると、玲央は、クスッと笑って、オレの頭に再び手を置いた。それからそのまま肩を抱いて、オレを引き寄せた。
「だから走ってこねーで、ぼーとしてたの?」
至近距離からじっと見つめられて、ただ、見つめ返すしかない。
……もうそれ以外に、オレが玲央の所に走っていかない理由、何もないよね……。まあ。確かに見たから、足が止まったんだし……。
仕方なくて、うん、と頷くと、玲央がちょっと面白そうに目を細める。
「何?……嫌だった?」
「……嫌って訳じゃなくて……玲央の事、大好きなんだろうなぁって思って。なんか邪魔しちゃいけない気がして離れてたら、そのまま、駆け寄れなかっただけというか……?」
「……邪魔しちゃいけないって」
玲央は少し困った顔をしてオレを見つめて、肩に乗せていた手でまたオレの髪をクシャクシャ撫でた。
「邪魔していいよ。……つか、邪魔したら?」
「……それは無理、かなあ……」
「何で?」
「何でって……すごく楽しそうに話してたし」
「オレが?」
「ううん。玲央は普通だったけど……女の子がすごく」
「――――……」
それ以上は何て言ったらいいか分からなくて、至近距離過ぎる玲央を、ドキドキしながら見つめていると。
「そこ、邪魔しちゃいけないとか、思うんだな」
クスクス笑って、玲央がオレの肩をポンポン、と軽く叩いて手を離す。
「……正直、嫉妬するとか分かんなかったのと同じ位、その気持ちは良く分かんないかも」
「邪魔しちゃいけないって気持ち?」
「ん。むしろ、優月が、優月を好きな女としゃべってたら、オレは邪魔したいかも」
自分で言いながら、また可笑しそうに笑って、玲央は、べ、と舌を見せる。
「……そっか」
「オレはね。そう思うけど。 まあ、優月らしいから、そういうのも可愛いけど」
そんな台詞に、玲央を見上げて、「可愛いの?」と思わず聞いてしまう。
「あんまり嫉妬しないっつっても、嬉しくはないだろ、オレが女と話してんの」
「……うん。嬉しくは、ないけど……」
「でも邪魔しちゃいけないって思うんだろ、女が楽しそうだから」
「……そこまではっきり考えてた訳じゃないんだけど……」
んー、と考えながらそう答えると。
「……優月?」
玲央が、オレを見下ろして、ぷに、と頬をつまんだ。
「まあ……きっとこれ言っても、お前は邪魔しには来ないんだろうけど」
「――――……?」
「オレの最優先はお前だから。オレにとっては絶対邪魔にはならないから。覚えとけよ」
「――――……あ。うん。……分かった」
その言葉の意味を考えて、分かった瞬間に微笑んでしまう。
玲央も優しく笑んで、つまんでたオレの頬を離して、背中に手を置いた。
最優先。
――――……オレが、最優先って。
ものすごく、さらっと。
すごいことを言ってくれたような気がするんだけど。
心の中で、ホクホク喜んでいると。
「――――……」
何歩か進んだ所で、玲央がクッと笑った。
「玲央?」
「ん?」
「何で笑ってるの?」
「んー……なんか、お前が最優先だから、とかいうセリフ」
「うん」
「オレが言うとか……嘘みたいだなーと思って。また勇紀に、何か言われそうと思ったら、笑えてきた」
……確かに、勇紀が聞いたら何か言いそう。
目の前で可笑しそうに笑ってる、めちゃくちゃカッコいい人を、ただ見つめていると。
「まあ、でも――――……本気で言ってるから」
「――――……」
不意に笑いを収めて、そんなセリフと共に、まっすぐに見つめられてしまうと。
顔に熱が集まる。
うう。顔が熱い……。
ほんと玲央と居ると、赤面、どうにもできない。
(2022/6/21)
後書き♡↓
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ものすごい久しく更新してなかった気がしたんですけど、
前回18日でした(・・? あれそんなもの…?
今忙しすぎて…。中々更新できなくてすみません💦
も少し落ち着くまでお待ちください♡
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