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第500話◇

   そんな話をしている内にコンビニについて、自動ドアの手前で、クロを下ろした。 「ちょっと待っててね?」  座ったクロを撫でて、自動ドアの中に入った瞬間。 「いらっしゃいま――――……あ! 優月くんと玲央くん!」  何だか少し声が大きい。多分品出しとかをしていたと思う、もう一人のおばちゃんも何だか急いで姿を見せて、「いらっしゃいませ」と超笑顔。  いつも、すごく話しやすくて、まあいつも笑顔だし、だからオレ、クロの話とか色々するようになったんだけど……。  今日はなんだかものすごーく、テンションが高い。 「……??」 いつものおばちゃん達の、なんだかいつもとは違う雰囲気に、あれ?と思ってから、ふっと気づいた。  ……あ、そーだ。こないだ、玲央がふざけて仲いいですよとか言って、おばちゃん達に多分叫ばせて、そのままだった! 「クロはさっきお昼食べちゃったから小さなおやつで大丈夫よ、優月くん」 「あ、はい」 「今日も二人でお買い物?」 「あ、……はい、そう、なんですけど……」  なるべく店員さんとして普通を装おうとしながらも、めちゃくちゃ興味津々にオレ達を見てるおばちゃん達と。  オレの横で、何だかとっても……悪戯っぽい、楽しそうな笑顔の玲央を見比べて。  オレはもう、とりあえず黙って笑っておこう、と決めた。 「ほんとに、仲良いんだね」 「そうですね」  玲央がけろっとして答えて、ふ、と笑う。  ……イケメンのオーラって、わざとキラキラ出せるものなんだろうか。  これ、無意識なら、ほんとにすごい。  おばちゃん達はまんまとハマって、ぽーと、玲央の顔を見ている気がする。 「優月、見に行こ」 「あ、うん」  あ、そこでオレの手を掴むとか。  今はやめた方が……。  でも変に離れるのもおかしいかなと思って、手を掴まれたまま、猫のおやつゾーンに到着。オレは、もう、隠れたくて、しゃがみこんだ。すると、玲央もクックッと笑いながら隣にしゃがむ。  ちら、と恨めし気に隣を見ると、ぷ、と笑って口元に手を当ててる。 「……もー玲央ってば」 「すげー面白いな、あの人達」  玲央はすごく小さくこそこそ言ってきて、クスクス笑い続けている。 「もう、すごいテンション高いから、これ以上あげないで」 「んー……」 「ね?」  近くで玲央を見つめると、ふ、と笑われて、頷かれる。 「分かったよ。……おやつ、こっちでいいか?」 「あ、うん」 「買ってくるから、クロ、捕まえとけよ」  そう言って、立ち上がると、玲央はレジに歩いて行ってしまった。    立ち上がって、雑誌の並びの間からさっきクロを座らせた所を見ると、まだちゃんと、ちょこんと座っていた。   可愛いよー。  玲央が、おばちゃん達と何かを話してるのを見ながら、ドアの所で立ち止まると、玲央はオレに視線を流してくる。ちょっと笑顔。  そのまま、おばちゃん達にまた向き直って、何かまた話してる。  オレはコンビニから出て、クロを抱っこした。 「おまたせー」  よしよしと撫でながら、ふふ、と笑ってしまう。  玲央って、あんな風に、店員のおばちゃん達と気安く話したりする人なんだなあ。ちょっと、意外。  何となくだけど、レジとか無言で立ち去りそうな。用があっても一言とかで終わらせそうな、そんなイメージ。  ちら、と店内に目を向けると、なにやら一人のおばちゃんと話しながら、こっちに向かってくる。  ん??  一緒に出てくる玲央とおばちゃん。 「写真撮ってもらお」 「え。あ。いいんですか?」  玲央の声に、おばちゃんを見ながら聞くと、もう玲央のスマホを持って構えていて、もちろんと笑う。 「優月、背景こっち」  そんな風に言われて、肩を抱かれて、向きを変えられる。 「お願いします」 「はーい」  そこから、超ウキウキで楽しそうなおばちゃんによる、玲央とクロとオレの撮影会。結構何枚もカシャカシャ連写される。  必要以上に玲央が近いし、おばちゃんが、いいねーと、ハートを飛ばしてる感じだし。  玲央がノリノリすぎて、しまいには、なんだかおかしくなりすぎて、すごく笑ってしまった気がする。 (2022/6/24) ◇ ◇ ◇ ◇ フジョさんで500ぺージ(∩´∀`)∩ 感謝です♡♡

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