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第501話◇
「はは。すっげー連写してる」
おばちゃんにお礼を言って別れて、玲央と歩き始めると、スマホを見ながら玲央が笑った。
「後で送ってね」
「ああ。……すごい数あるけど」
玲央が可笑しそうにクスクス笑ってる。
「ええっなんで?」
「高速にしてたら、すごい連射してたみたいだな。動画並に動いて見える」
ほら、と言って見せてくれる写真が、ほんとにコマ送りみたいな動画に見える。可笑しくて、クロを抱っこしながら、笑っていると。
「この高速のは、1枚だけで、あとはちゃんと撮れてるのを何枚か送る」
「うん、分かった。ありがと」
「とりあえずベンチ行こ」
「ん」
玲央がスマホを手に持ったまま、オレを見つめる。
「優月、すげー可愛く撮れてたよ」
「え、そう?」
クロを抱き締めたまま、玲央を見つめると、玲央は瞳を緩めて、にっこり笑った。
「そうだよ。可愛い」
「――――……あり、がと」
否定する気も起きない位、優しく笑われて、お礼を言うのも変だけどと思いながらそう言うと、玲央はますます笑う。
「玲央は良い感じだった?」
「んー? 後で見て感想言って」
「絶対カッコいいと思うけど」
そう言うと、玲央は笑ってオレの頭に手を置いた。
「キスするよ?」
「……だ、だめ……だけど……」
「じゃあそーいうこと、可愛く言うのやめたら?」
と笑われるのだけれど。だって、玲央が先に、可愛いって言うからだし……。
ちょっと複雑な気分で下を見ると、クロがオレを見上げてる。
目が合うと、可愛すぎて、ふふ、と笑ってしまうと。
「ほんとにクロの事好きだなー」
オレの頭をくしゃくしゃ撫でながら、ちょっと面白くなさそうに言ってくる玲央に苦笑い。
「さっきの絶対な?」
「さっきのって?」
忘れてたのか?という顔でオレをちら、と見て、オレの肩に手を置いてくる。
「帰ったら、撫でろよなって言ったろ。……同じように」
「お、なじように……??」
ど、どうやって? クロにやってるみたいにこんなにスリスリ玲央を撫でるとか。すごい恥ずかしいんだけど。
かああっとまた顔に熱が集まる。
玲央がクスクス笑いながら。
「オレ、お前のその顔、一生見てられる気がする」
「……っ」
「可愛すぎて」
手が伸びて来て、頬から首の方に滑る。くすぐったくて、ぴく、と震えてしまうと。玲央が、ちょっと黙ってから、はー、とため息をついた。
「……シたくなりそう」
「――――……っ」
もう一度息をつかれて、よし、早くいこうと背を押される。
いつもの休憩場所、ベンチに座ってから、オレはクロに小さなおやつを一個だけあげて、残りは鞄にしまった。
すぐに食べ終わって、にゃ、と鳴く。
「もっと食べたい? んー、食べたいよねぇ……でもなーお昼食べたばっかりなんだもんね、クロ……」
どーしようかなー、とクロと話しながら、よしよし頭を撫でていると、不意に、隣から、カシャというシャッター音。
え、と玲央を見上げると、クスクス笑ってる。
「――――……玲央?」
「見てみな、同じような残念そうな顔してるから」
見せられた画面には、確かにオレとクロ、なんかがっかりした顔で見つめ合ってる。
「ありゃ。ほんとだ」
笑ってしまいながら画面を見つめていたけれど、ふと、嬉しくなった。
「なんか、クロとの写真、嬉しい」
「ん?」
「だってずっと1人で来てたから、写真なんか撮れないし。ありがと、玲央」
「――――……ん」
見つめた瞳がまた優しく緩む。玲央の手がオレにかかって、引き寄せられて……と思った時。
「にゃあ!」
なんだかすごい声がして、玲央もオレも、 ぴたっと止まった。
「ぁ、おやつ。欲しいのかな。も一個だけあげるね」
鞄にしまったおやつを取り出して、もう一つクロに食べさせていると、隣で玲央が苦笑い。
「二度目だぞ、クロ」
今日キスしようとした時に、二回鳴いたクロ。玲央は、言いながらクロの頭をぶにぶに撫でている。
――――……なんか笑みまじりの、優しいそれに、胸が、なんか。
トキメク、としかいいようがない。
「さっきの写真、送っとくから」
玲央がそう言って、少し体を戻してスマホを操作してるのを見つつ、オレはクロにおやつを食べさせた。終わると同時に、玲央に、体を向けた。
「玲央」
「ん?――――……」
オレは、もう大好きで、大好きで、大好きな玲央にそっと近づいて。
ちゅ、とキスをした。
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