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第503話◇

  「――――……また、そういう顔してると……」  玲央がオレをちらっと見て、目を細めて微笑んだ。 「どっか、連れ込むよ?」  玲央の瞳がカッコ良すぎて、その上色っぽく緩むと、引いてきた顔の熱がまた戻ってくる気がする。 「そういう、顔、って……?」 「……どこでもついていきます、的な顔?」  クスクス笑いながら、玲央の手がまた頬に触れて、ぷにぷにつままれる。 「……」  やっぱり、エスパーだ。玲央。  ついていきたいって、完全に思ってた。 「バレたーって顔すんのも。――――……マジでかわいー」  玲央の両手がオレの頭に触れて、くしゃくしゃと撫でられる。  わー、髪がー、と思った瞬間。そのまま頬に触れて、玲央が近づいてきて、唇が触れた。 「……好きだよ、優月」 「――――……っ」  もう、息が、止まりそうになる。  こんなに、好きだと思うのも初めてだし、こんなに、ドキドキするのも初めてだし。その相手に、こんな昼間の明るい所で、キスされながら、こんな風に言われちゃうとか。 「湯気出そう……」  膝に乗ってるクロを撫でまくって、平常心を取り戻そうとしていると、玲央はクスクス笑う。オレの熱すぎる頬をさすりながら、また顔を上げさせられて、至近距離で見つめ合う。 「……っ出るよ、湯気……」 「――――……出してみ?」  可笑しそうに笑って、玲央がそう言って、見つめてくる。 「――――……」  も、なんか、その楽しそうな顔も見惚れちゃうし、もーどーしたら……。  そう思った瞬間。    遠くで、予鈴が聞こえた。 「……残念」  玲央によしよしされて、離される。  ――――……もうすぐ、玲央と離れなきゃ。  ちょっと寂しくなりつつ、クロをナデナデしていると、玲央が立ち上がった。 「行くか?」 「あ、うん。 クロ、またね」  最後にめちゃくちゃ撫でてから、膝から下ろして、立ち上がった。 「久しぶりにゆっくり触ったんじゃねえの?」 「うん。そうかも……じゃあね、クロ」  一撫でしてから、鞄を肩にかけて、玲央の隣に立った。  歩き出すと、玲央がオレを見下ろす。 「写真あとで見てみな? クラス会で見せられないことはないと思うけど」 「うん、ありがと」 「――――……でもなんかオレはちょっと嫌かも」 「え。何で?」 「見れば分かるけど――――……すげー笑ってるから」 「……そうなの?」 「だって、コンビニのおばちゃん、すげえ面白くてさ。カシャカシャすごい音してるし」  玲央は思い出し笑いで、クックッと笑ってる。 「優月はクロと楽しそうだし、なんか、色々おかしくて」 「見ていい?」 「んー……後で見て」  苦笑いの玲央に、ん、と頷く。 「とりあえずそれ、勇紀と稔には見せんなよ?」  そんな台詞が面白くて、笑いながら頷いた。 「あ、そうだ。オレ、今日駅前のカラオケに居るから」 「え、そうなの?」 「勇紀が行きたいって。颯也とかも夕飯と一緒ならとかでOKだったから、そうなった」 「分かった。楽しんできてね」 「ん――――……そろそろ帰る頃になったら連絡しろよ」 「え?」 「一緒に帰ろ?」 「――――……」  玲央の顔を見ると、優しく笑って、オレをまっすぐに見つめてくれている。  嬉しくて、頷く。 「22時位?」 「うん、いつもそれ位かな……もうちょっと遅いかも」 「いーよ、カラオケに居るから。オレあっち、優月は?」  分かれ道で止まって、玲央がそう言う。 「オレは向こう」 「ん……じゃあな、優月。気を付けて行けよ?」  頭に置かれた手に、優しく撫でられると、顔が勝手に綻んでしまう。 「玲央も、気を付けてね」 「ん。後でな」  玲央の言葉に、うん、と頷いてから、玲央と別れて教室に向かって歩き出した。

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