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第505話◇
前途多難な感じがしながら、とりあえず皆に、相当びっくりすると思うという布石だけ置いておく。
とりあえず、この中だと一番笑顔がおさえられてるのにしよう。
あんまり可愛い玲央を人に見せたくないから……これだな。
玲央とのトーク画面から、一枚だけ選んで写真フォルダに保存した。
これでよし、と、スマホをポケットにしまった時。
「お、居た居た」
呑気な声を出して、近づいてくるクラスメート達。皆それぞれ挨拶しあう。
「お、優月、何か久々」
そう声を掛けてきたのは、|小林 恭介《こばやし きょうすけ》。ぱっと見は派手な感じなのだけど、何だか気が合って、去年は一番仲良かったかも。ただ、同じ学部なのにどーして?と思う位、授業がかぶらないし、更に、必修とかも恭介は休んだりするから、もう、ほんとに会わない。
「元気だったかー?」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。
「元気だよ、もう。 ていうか、恭介さ、今週学校で会ってないよー来てる?」
「一応来てはいる。あ、必修は、遅れてこっそり後ろに居たかも」
ははっと笑ってる恭介に、もー、と笑ってると、周りから声がかかった。
「会ってないってことは、優月が付き合い出したの、知らないの?」
「え?」
その言葉を受けた恭介が、ぱっとオレを見下ろす。
「そうなのか?」
「うん、まあ……そう……」
「マジで? 良かったなー」
恭介はめちゃくちゃ笑顔で言ってくれる。
うん。こういうとこが好き。
人の嬉しい事、すごく喜んでくれたりするところ。
そう言う人だって分かってから、色んな事を話すようになった。
「どんな子? 学校の子? オレ知ってる?」
「んー……後で話すね」
「何、もったいぶって」
恭介がオレの頬をぶにぶにと引っ張ってる所に、吉原が「何してんの」と言いながらやってきた。
「優月が好きな奴の事、後で話すとか、もったいぶるから」
「もったいぶってる訳じゃないんだけど……びっくりすると思うから、ゆっくり話せる所で話したくて……」
「なんだよ、それ、すげー気になるじゃんか」
「でも後で話すからー」
オレと恭介がもみ合っていると、吉原が笑った。
「何なんだよ、びっくりするって。前振り凄すぎて、びっくりしないパターンなんじゃないのか?」
そう言われて、んー、と考えてから。
「皆がびっくりしないなら、それはそれで、オレは嬉しいけど……」
そう言ったら、周りの皆は、それぞれに首を傾げた。
「ごめんそんな悩まないで。あとでちゃんと話すから」
苦笑いでそう言うと、皆、あぁ、と頷いてはくれるけど。なんだか不思議そう。……でもだって……これだけ言っといても、きっと――――……。
「あ、優月。さっき、神月を見かけた」
「え」
どきーーーん。
吉原の言葉、心臓がめちゃくちゃバクバクしてしまう。
「最近も仲いいの?」
「……あ、うん、まあ……」
そうだった。吉原は玲央と幼稚園から一緒なんだった。
先週オレが頭撫でられてる時に会ったんだっけ……。
にしても、なぜ今このタイミングで名前を出すんだ。
心臓のバクバクが収まらない。
「やっぱりお前とあいつが仲いいの不思議でさ。神月を見かけると、優月が浮かぶ」
クスクス笑われるけど、こちらは笑い事ではない……。
「神月って、神月玲央?」
恭介もフルネーム知ってるんだなあと、また驚く。
ほんと玲央ってすごい……。有名すぎる……。
「なに、仲良いの、優月? あのド派手な目立つ奴だろ?」
「……う、ん」
……間違ってはいないから、頷くんだけど。
ド派手な目立つ奴、かぁ……。
……確かに目立つし、驚くほどカッコいいけど。
「男女問わずって奴じゃなかったっけ?」
「――――……」
その噂は、仕入れててほしくなかった……と思うけど。
……オレが知ってたくらいだからしょうがないかな。
「優月気を付けろよー? お前なんて慣れてないからチョロそうだし」
「えっ」
今度は恭介のセリフに、心臓が、また大きな音を立てた。
わーん、もうだめだ。今日、オレの心臓、相当ダメージを負うかも……。
いやいやでもでも。
玲央との関係、仲いい皆に、認めてほしいし。
――――……頑張るんだ。
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