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第506話◇
皆が集まってから、店に移動して、座敷に座った。
酒が飲める数人はお酒、飲めない皆はノンアル。
「いーなー、オレらも早く飲みたい」
飲めない皆が言うのはいつも同じセリフな気がする。
今飲めるのは、四月と五月生まれか、浪人して年上の人だけだから、そんなには多くはない。
お酒かぁ。
……んー。玲央とか、お酒、似合う気がする。
似合うって言うのも変だけど。なんか。……カッコいい気がする。
何が好きかなあ、玲央は。
何となく日本酒ってよりカクテルって感じ……? ……よく分かんないけど。あ、ワインとかも似合いそうな。
うーん。カッコいい、横文字のお酒が似合うような……。
メニューのお酒の所をじーっと見つめていると、隣から、恭介が笑った。
「優月、酒飲みたいのか? 意外」
そんな質問に、笑ってしまう。
「違うよ、ちょっと見てただけ」
玲央に似合うなーなんて。
……すぐ玲央のことばっか、考えてるし、オレ。
結局集まったのは二十人位。クラス五十人弱だから、半分近く来たんだなぁ。わりと直前だったのに、すごい。
もちろんあまり参加しない人も居るし、毎回参加する人も居る。オレは予定さえ合えば大体参加してるので、今ここに居る皆とは、結構仲良し。
とりあえず、ここの皆に、言えたら、それでいいかな。
と思ったんだけれど。
――――……なんか、いざとなってきたら急に、言って良いのかな、と思い始めた。
普段のオレの態度で、好きな人が居て付き合ってるっぽいというのはバレてて、都度聞かれるし、授業の教室でなんて話したらそれこそ大騒ぎだし。玲央も言って良い、バレても構わないって言うし、オレもそう思う。
――――……って、思ってたんだけど……。
玲央は確かに、相手が男女問わないとか噂あったけど、それはあくまで噂で、しかも遊び……みたいな感じだったし。
バンドもあるし、玲央のお家は、なんだかすごいおうちっぽいし。
……遊びじゃなくて、他の人と付き合うのやめてまで、男のオレと付き合ってるとか、噂、飛んでも大丈夫かな?
遊んでたっていう噂があったんだから、今更、みたいなこといってたけど……むしろ逆なんじゃ……? 遊びなら周りも適当に見てるけど、男のオレと、完全に本気で付き合ってます、とか。そんなのって、言っていいのかな? と、突然ふっと心に沸いた。
あれ。どうしよう。これ、玲央に確認、した方がいいかな。
もう一回、聞いてからにした方が……?
周りの皆と適当に話しながら、ふと、心の中で、めちゃくちゃ考えていると、恭介がオレを覗き込んだ。
「お前なんか、心ここにあらずだろ」
クスクス笑う恭介に、周りが笑い出す。
「また彼女のこと考えてんの?」
「優月、どんだけ好きな訳」
はやし立てられて、違うよ、と一応言うけど、全然聞いてくれない。
確かに玲央の事を考えてはいたけど、今はそんなんじゃない。
「え、何、優月くん、彼女できたの?」
恭介の向こう側から、女の子達が乗り出してくる。
「そーなんだよ、千佳、後で優月が好きな奴発表するってさ」
恭介が仲良しな千佳ちゃん。
と言ってもそういう雰囲気じゃなくて、完全に友達って感じだけど。
「なーに、好きな人発表って。そんな重大発表なの?」
クスクス笑う千佳ちゃんに、そうらしいよ、と恭介が勝手に答えてる。
――――……あとにはひけない感じ。
そうだよなー、結果的に、散々引っ張っちゃったしなあ……。
どーしようかな。と考える。
さっき、もう一度聞いてみようかなって思ったけど、玲央はきっと、もう一度聞いても、良いって言うんだと思う。
玲央は、迷わない。人の噂なんかあんまり関係ないって思ってる気がする。 ……そういうとこ、強くて、カッコいいなって思う。……思うんだけど。
「どんな子ー? 優月くん」
ウキウキ楽しそうに聞いてくる、女の子達に、うん、と頷くと。すぐに脇から、恭介が。
「優月の好きになる子だからなあ……何となく想像はつくんだけど」
「えーたとえば?」
「絶対可愛いだろ。優しそうな子っぽい」
「分かる分かるー!」
えーと。皆がとっても盛り上がってる。オレを置いて。
女子は、とってもとっても楽しそうに、笑顔満開。
そういえば最近男とばっかり話してて、女の子とは話してなかったかも。
――――……この反応。
オレが玲央ととか言ったら――――……叫ぶだろうなぁ……。
……覚悟は、してきて、ここにきたんだけど。
う、うん。
どーしよ。
玲央に迷惑が掛からないなら、もういいんだけど。
土壇場で急に気になって、そわそわし始めてしまう。
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