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第513話◇

 部屋のドアを閉めて鍵をかけて、靴を脱ぐ。 「玲央、アイス今食べちゃう? あとで?」 「んー……シャワー浴びてからにしよ」 「うん。じゃあ冷凍庫にいれてきちゃうから貸し――――……」  アイスを受け取ろうとして出した手を掴まれて、そのまま壁に背中をつけられた。  振り仰いだ唇に、玲央の唇が重なる。 「――――……優月……」  熱っぽい声で名を呼ばれて、至近距離の玲央の瞳と見つめ合って、閉じることが出来ないまま。  玲央の舌が、オレの舌先に触れた。 「……ん――――……」  絡んでくると、耐えられなくて、ぎゅ、と瞳をつむる。 「……っふ」  顎に掛かった手に、上向かされて固定されて、舌を吸われると、体が震える。 「……っん、ン……」  玲央の服にしがみつくみたいに、ぎゅ、と握ったところで、玲央がゆっくり唇を離した。 「――――……とけちゃうよな」 「……ん……」  ほんと。頭とけそう……。  優しく囁かれて、頷いていると、玲央がちゅ、と頬にキスした。 「もう結構とけてるかな。冷凍庫いれてくる。服もってすぐ行くからシャワー浴びてて」 「――――……うん」  頭を撫でられてから背中をそっと押されて、バスルームに押し込まれて、ぽー、としながら服を脱ごうとし始めた時。  んん?  とけるって。  ……アイスのこと?  頭じゃなくて?  「――――……」  勘違いに気付いた瞬間、なんだかものすごく恥ずかしくなって。  脱ぎかけた服に口元埋まったまま、固まる。  何考えてんだろ、オレ。  とけるとか。  玲央にキスされてると、とけそう、とか、よく思うから。  咄嗟にそっちが浮かんじゃった。 「…………っ」  そこでドアが開いて、脱衣所で固まってたオレに、遅れてやってきた玲央が、ん?と驚く。 「まだここに居たの? どした?」 「……」  プルプル。  首を振って、なんでもないとアピールしたけれど。 「どした?」  くす、と笑う玲央に、口元の服を下げられて、のぞき込まれた。 「……優月?」  優しく頬に触れられる。  じっと見つめられて、どんなごまかしも浮かばなくて、仕方なく、言う事にしてみる。 「……たいした事じゃない、よ?」 「ん。いいよ」 「……さっき、とけちゃうって……アイスのこと、だよね……?」 「――――……オレが、とけちゃうよなって言ったやつ?」 「うん」 「ん、まあ……そうだけど?」  そうだよね、と苦笑いしか浮かばない。 「それがどうした?」 「……ちょっと勘違い、しててさ」 「勘違い? 何を?」  俯くのだけれど、顔を包んだ手に、まっすぐ上げさせられる。 「何だよ?」  クスクス笑いながら、玲央に急かされる。 「……頭とけちゃうって言ったのかと思って、うん、て答えたんだけど……」 「――――……」 「……ここに来てから、勘違いだって気付いて、恥ずかしくなって」 「……ああ……頭がとけちゃうなって言ったと思ったの?」 「……うん」  ていうか、オレは、一体なんでこんな恥ずかしい勘違いをわざわざ暴露してるんだ。早くお風呂入っちゃったとけば、良かった……。 「……優月、キスすると、いつも頭がとけるとか思ってんの?」 「――――……」  ……恥ずかしすぎる。  うんとは言えず、じっと玲央を見上げていると。  クッと笑って、楽しそうに目を細める。 「かわいすぎ……」  頬や額に何度もキスされる。  くすぐったいけど……優しくて、大好きなキス。 「――――……玲、央……」  じっと見つめられて、笑む瞳に吸い寄せられるみたい。 「する? キス」 「――――……うん……」  一度触れて、少しだけ離れる。 「……とけるみたいなの、する?」  そんな風に聞かれると、ドキドキしすぎて、頷くのも、うまくできない。  でも頷けなくても、玲央は、優しく微笑んで。  顔を傾けて、近づいてくる。    初めてキス、された、ひたすらびっくりしてたあの時から。  ――――……玲央のキスは、大好きだったなあと、キスされながら、思う。

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