508 / 856
第514話◇
「……んっ――――……んん……ふ……」
キスだけしか、されてないのに。
熱くて熱くて。息が、上がって。
うまく吸えなくて、少し唇を外すとくぐもった声が上がるけど、そこをまた深く塞がれる。
「……っん……ん、ぁ……っ」
玲央の背中に回した手で、服を握り締める。
舌を絡め取られて、吸われて、舌が引きつると、声が漏れる。
少し、痛いような。――――……でも、また柔らかく舌を噛まれると。ゾクゾクして。際限ないみたいに熱くなって、汗が、滲む。
「……っんン……」
少し顔を引いて玲央の唇を外して、ふは、と息を吸うと。
「鼻で吸えって……」
甘いとしか思えない声で、柔らかく笑う声がして。
顎を掴まれて、また重なってくる。
「……ん、んん……っ」
頭んなか、真っ白。
気持ちよくて。
いつもそうなんだけど、勝手に、涙が浮かんで、瞳を開けても視界がぼやける。
「れ、お……」
後ろ、洗面台によりかかってるみたいにされて。
玲央の手にも、支えられて。
ひたすら、上向いて、キスされる。
「――――……ん……っン……ん、ぁ……」
吸われてた舌が戻されて、玲央の舌が、オレの口内に入ってくる。
ぎゅ、と目をつむると、涙が零れてくけど、そんなの構ってられない。
いつも、されると、やばいこと。
玲央の舌に、上顎をなぞられると――――……。
「――――……っっ!」
びく、と全身が震える。
「……優月、あっつ……」
唇の間で笑いながら、玲央の手が、下に触れてくる。
「……んん……っ……だっ、て……やだ、さわんないで……」
玲央を見上げて、そう訴えると。
じっと見つめられて。――――……ふ、と、苦笑いされる。
「だめだよ、優月」
「……っ……?」
だめって……?
玲央を見上げると。
「え。……あ」
ベルトを外される動きに下を向いて、少し焦る。待って、ともう一度見上げるけれど。一瞬見つめ合った後、クスッと笑われる。
左手を背中に回されて、ぐい、と抱き寄せられる。
「そんな涙目で見られんの、可愛すぎて無理」
熱っぽい声で耳元で囁かれて、ぞく、と背筋が震える。
可愛すぎてとか、そんな訳ないと思って、すごく、恥ずかしいのだけど。
右手は、オレのに、直接触ってくるし。
抱き寄せられて、深く深くキスされて。
「……っん……ん…… っ、ふ……」
ダメ、もう無理無理。
触れられてすぐだけど。もう、無理。
無理無理、と、めちゃくちゃ首を振ろうと思うんだけど、玲央の左手が後頭部をおさえてて、全然顔、動かせない。
「……っんっ……んー……っ!……っっ」
玲央の手の中で、すっごく、簡単に。あっという間、に。
――――……ていうか。
早過ぎ……。
「……っふ……」
なんだか、恥ずかしいのか何なのか、もう複雑すぎる感情に、ぼろ、と涙が零れたら、玲央がびっくりした顔で、オレを見て、少し唇を離してくれた。
「泣くなよ……」
クスクス笑いながら、玲央が涙を舐める。
「……はは。かわい」
よしよし、と後頭部を撫でられる。
そのまま少し離されて。じっと、見つめられて。
「……っ……?」
なに? と首を傾げると。
ふ、と玲央が、悪戯っぽく笑う。
「どう? とけた?」
一瞬、何のことか、分からない。
とけた?
あ、とけた。
さっきの話。
もう頭、まっしろで、消え去ってた。
「…………っとけ、すぎた……」
もう、完全にキャパオーバーだよ……。
オレに触れてる玲央は、まだそのまま、触れたままだし。もう、また反応しそうだし。
「手、離して……?」
「無理」
笑み交じりで言われて、ちゅ、と頬にキスされて、そのまま、首筋に、かぷ、と噛みつかれる。
びくん、と、震える。
「……っ」
オレが、無理だよう……。
もう、なんか、全部、ビクビクしてる。
見上げると、本当にこういう時、色気だらけになっちゃう、玲央は。
ふ、と目を細めて笑うだけで。めちゃくちゃ、カッコよくて。
ほんとに。
…………たちうちできないと、思い知る。
ともだちにシェアしよう!