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第514話◇

  「……んっ――――……んん……ふ……」  キスだけしか、されてないのに。  熱くて熱くて。息が、上がって。  うまく吸えなくて、少し唇を外すとくぐもった声が上がるけど、そこをまた深く塞がれる。 「……っん……ん、ぁ……っ」  玲央の背中に回した手で、服を握り締める。  舌を絡め取られて、吸われて、舌が引きつると、声が漏れる。  少し、痛いような。――――……でも、また柔らかく舌を噛まれると。ゾクゾクして。際限ないみたいに熱くなって、汗が、滲む。 「……っんン……」  少し顔を引いて玲央の唇を外して、ふは、と息を吸うと。 「鼻で吸えって……」  甘いとしか思えない声で、柔らかく笑う声がして。  顎を掴まれて、また重なってくる。 「……ん、んん……っ」  頭んなか、真っ白。  気持ちよくて。  いつもそうなんだけど、勝手に、涙が浮かんで、瞳を開けても視界がぼやける。 「れ、お……」  後ろ、洗面台によりかかってるみたいにされて。  玲央の手にも、支えられて。    ひたすら、上向いて、キスされる。 「――――……ん……っン……ん、ぁ……」  吸われてた舌が戻されて、玲央の舌が、オレの口内に入ってくる。  ぎゅ、と目をつむると、涙が零れてくけど、そんなの構ってられない。  いつも、されると、やばいこと。  玲央の舌に、上顎をなぞられると――――……。 「――――……っっ!」  びく、と全身が震える。 「……優月、あっつ……」  唇の間で笑いながら、玲央の手が、下に触れてくる。 「……んん……っ……だっ、て……やだ、さわんないで……」  玲央を見上げて、そう訴えると。  じっと見つめられて。――――……ふ、と、苦笑いされる。 「だめだよ、優月」 「……っ……?」  だめって……?  玲央を見上げると。 「え。……あ」  ベルトを外される動きに下を向いて、少し焦る。待って、ともう一度見上げるけれど。一瞬見つめ合った後、クスッと笑われる。  左手を背中に回されて、ぐい、と抱き寄せられる。   「そんな涙目で見られんの、可愛すぎて無理」  熱っぽい声で耳元で囁かれて、ぞく、と背筋が震える。  可愛すぎてとか、そんな訳ないと思って、すごく、恥ずかしいのだけど。  右手は、オレのに、直接触ってくるし。  抱き寄せられて、深く深くキスされて。 「……っん……ん…… っ、ふ……」  ダメ、もう無理無理。  触れられてすぐだけど。もう、無理。  無理無理、と、めちゃくちゃ首を振ろうと思うんだけど、玲央の左手が後頭部をおさえてて、全然顔、動かせない。 「……っんっ……んー……っ!……っっ」  玲央の手の中で、すっごく、簡単に。あっという間、に。  ――――……ていうか。  早過ぎ……。 「……っふ……」  なんだか、恥ずかしいのか何なのか、もう複雑すぎる感情に、ぼろ、と涙が零れたら、玲央がびっくりした顔で、オレを見て、少し唇を離してくれた。 「泣くなよ……」  クスクス笑いながら、玲央が涙を舐める。 「……はは。かわい」  よしよし、と後頭部を撫でられる。  そのまま少し離されて。じっと、見つめられて。 「……っ……?」  なに? と首を傾げると。  ふ、と玲央が、悪戯っぽく笑う。 「どう? とけた?」  一瞬、何のことか、分からない。  とけた?  あ、とけた。  さっきの話。  もう頭、まっしろで、消え去ってた。 「…………っとけ、すぎた……」  もう、完全にキャパオーバーだよ……。  オレに触れてる玲央は、まだそのまま、触れたままだし。もう、また反応しそうだし。 「手、離して……?」 「無理」  笑み交じりで言われて、ちゅ、と頬にキスされて、そのまま、首筋に、かぷ、と噛みつかれる。  びくん、と、震える。 「……っ」  オレが、無理だよう……。  もう、なんか、全部、ビクビクしてる。  見上げると、本当にこういう時、色気だらけになっちゃう、玲央は。  ふ、と目を細めて笑うだけで。めちゃくちゃ、カッコよくて。  ほんとに。  …………たちうちできないと、思い知る。  

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