510 / 856
第516話◇
ぽわぽわのまま、棒のアイスをゆっくり食べてる。
すぐ隣に座って、かき氷を口に入れながら、その様子を何となく見守る。
――――……可愛いなあ……。
「美味しい?」
そう聞くと。
「うん」
にこ、と笑って頷く。
いつも早くはないと思うのだけれど、それ以上に、動作も言葉も、ゆっくりな優月。
「あ。……たべる? 玲央」
オレがぴったり張り付いて座ったので、ほんと、至近距離から優月が見上げてくる。
「味見するでしょ?」
はい、とアイスを差し出してくる。
少しだけ食べて、やっぱり食べ慣れない味だなーと思う。
「食べたことない」
「そうなんだー……美味しい?」
「んー…独特?」
思うまんまそう言うと、優月は、クスクス笑って、ぱく、とアイスをかじる。
「食べ慣れると美味しいよー?」
「――――……」
優月の顎を捕まえて、引き寄せてキスして、中のアイスを舐める。
「……ふっ……」
舌が触れ合うと、ぴくん、と、優月の体に力が入った。
「……玲央、あ、の……」
「ん?」」
「――――……今……しないで……?」
「……キスを?」
「……あと触ったりも……」
……なんか、ぴくぴくしてる。ぷるぷる震えてる、ちっちゃい生き物みたいに見えて、思わず、クスクス笑ってしまった。
「どして?」
分かっているけど、言わせたくて、聞いてしまう。
優月は、言いにくそうに。
「なんか……今、ちょっと……」
「ちょっと――――……何?」
する、と手を伸ばして、優月の首筋に触れて、そのまま、うなじに手を回すと、ますますぷるぷるして、ちょっと退いて行く。
「すっ、ごく、ぞくぞく、するから……」
すり、と首筋に指を這わせたら、優月が、大きくびくっと震えた。
ああ、なんか。すげー感じやすくなってンな……。
可愛くて、このまま、ほわほわさせてやりたいっていう気持ちと。
――――……真逆の、めちゃくちゃ感じさせて、オレのもんにしたいっていう、激しい欲と。
両方とも同じ位強くて。
――――……あーでも。
「……エロい、優月」
「…………っっ」
その言葉に、うるうる涙目になる優月に、ほんとならもうこのままベッドに運びたいのだけれど。
ほんと可愛くて。もう少しこのまま可愛くてもいいなと思うのと。
それに、アイスも残ってるしな。
「分かった、いいよ、さわんないから。アイス食べて」
言ってる言葉の間にもう、ぱぁっと嬉しそうな笑顔になって。
うん、と頷いて、アイスをもぐもぐしてるのを見ると。
毒気を抜かれる、というのか。
……はーほんと。
なんでこんなに、可愛くなっちゃうんだろうか。
くすぐったくならないように、わしゃわしゃと髪を撫でて、オレもかき氷の残りを食べていたら。じっと見つめられる。
「ん?」
「ソーダは美味しい?」
「ん。食べたいか?」
「うん」
「……ほら」
スプーンで、優月の口に入れてやると。
口が開いて見えた舌に、めちゃくちゃキスしたいと、オレが思っているのなんか、露ほども知らない優月は、オレをまっすぐに見上げると。
「ソーダのかき氷、久しぶり。おいしーね」
ほくほくと嬉しそうに言って、笑う。
「――――……」
なんか。
脱力しまくる。優月と居ると。
可愛すぎて。なんなの。ほんと。
タメなのか、ほんとに。
ついつい撫でてしまう。
ともだちにシェアしよう!