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第517話◇

 優月がこんなに可愛いのって。  ……マジで、どうやって育ってきたんだろうか。  オレはもうかき氷は食べ終わったので、優月をオレに寄りかからせるみたいに密着させて座らせながらヨシヨシしつつ。  何回か、考えたような気がすることをまた考える。  智也と、あの女の子が幼馴染で、中学まで。  高校は、一人?で頑張ったとか。友達多かっただろうけど。  ……小学生からずっと、蒼さんと久先生が居て、絵を描いてて。  双子の弟妹と、親と、きっとほのぼの暮らして。  ……女の子は仲良くなりすぎて、そういう風にならなかったとか、確か言ってたよな。なんかそれは分かる気がする。  女子にめちゃくちゃ可愛がられていそうな想像が容易に出来る……。 「……食べ終わった?」 「うん」 「コーヒー飲む?」 「うん」  優月の持ってたゴミを受け取ってサイドテーブルに置いて、コーヒーのマグカップを渡す。 「ありがと……」  …………嬉しそうに笑われると、なんか、よく分からない癒しの空気が、ぽわぽわ飛んでくるイメージ……って、オレは一体何を言ってるんだかな。  知らず、自分の頭を掻いてしまう。  なんか、思考がらしくなさすぎて、ものすごく、ムズムズする。 「……玲央のこの部屋はさ」 「うん?」  不意に話し出した優月に視線を戻す。 「ここには、あんまり人、来てないんでしょ?」 「ん。ああ。そうだな」 「玲央、こんな広いとこで、どこに座ってたの?」 「――――……どこだっけ」  突然の質問に、首を傾げると、優月は、ふふ、と笑ってる。 「……ああ。あんまり、帰っても無かったかも。シャワー浴びて寝るだけとか。朝も起きて……シャワー浴びて、学校、とか」 「――――……ぁ、そうなんだ」 「そう。……そーいえば、ここにこんなに長く居るのも、初めてかも」  言ってておかしくなってくる。 「朝作ったり、夜も作って、コーヒー淹れて、とか」  目の前で、じっとオレを見てる優月の頬に、そっと触れる。  動かすとくすぐったがるから、触れるだけ。 「……何もしてなかったから、すげー不思議」 「――――……」  じーっとまっすぐオレを見てた優月は、もそもそと動いて、コーヒーをサイドテーブルに戻すと。 「――――……?」  くる、と振り返ると、腕を首に回して、ぽふ、と抱き付いてきた。 「優月?」 「……んー……あのさ、玲央」 「ん」 「……なんていうか……無理は、しないでね?」 「――――……無理って、何が?」 「……だって、ずっと外で色んな人と楽しく過ごしてたと思うから……そんなに生活って急に変えたら、疲れないのかなあと思って」  そんな言葉に苦笑いが浮かんでしまう。 「……楽しくってどういう意味? セフレとか?」 「……んー。そういうのもだし、他の友達とかとも遊んでたんだろうし」 「遊びに行って欲しいの?」 「行って欲しいっていうか……別にそうじゃ、ないんだけど……なんて言うか……」  オレにくっついたまま、考えながら話してる優月を見てると。  何だか、ものすごく――――……可愛くて、たまらなくなって。  ……なんか、心臓の辺りが痛いような。  めちゃくちゃ可愛いぞ……。 「……なんなの、お前」 「え??」  むぎゅ、と抱き締めてしまう。 「あのさー、優月。……オレ、遊びたいだけ遊んできた気がするけど……それしてて、まあ楽しくなかった訳ではないけど……本気で誰とも付き合えないっていうの、やっぱ嫌なとこもあって。でもまあ、諦めてたし、別にいいやとも、思ってたんだけど」 「――――……」 「オレ、お前のこと、ほんとに可愛い訳。会ってからずっと、すげー可愛いと思ってんの。初めて、こんなに一緒に居たいとも、思ってる。分かるよな?」 「――――……う、ん」  言いながら優月の顔を覗き込むと、めちゃくちゃ照れた顔でオレを見つめてくる。 「だから、無理なんか、いっこもしてねーし」 「――――……」 「それに言ったろ、健康になってるって」  クスクス笑いながらそう言うと、優月がふ、と瞳を緩める。 「――――……うん。言ってた」  嬉しそうに、微笑んで、腕の中でオレを見つめてくる。  ……まっすぐなこの瞳が、もう、死ぬほど可愛いって。  昔のオレに言ったら、ほんと、驚くだろうなあ。  可愛くてたまらない、その頬を引き寄せて、ゆっくり、唇を触れさせた。

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