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第518話◇
やっとアイスを食べ終わった優月にキスしたのに。
テーブルに置いたスマホが、何度もうるさく振動する。
「――――……」
最初無視しようとしたのに、優月が、少し離れて、オレを見上げた。
「……見てきて?」
クスクス笑って、オレを見上げる。
「コーヒー飲んでるね」
「ああ」
ため息をつきながら優月から離れて立ちあがり、テーブルに近付いた。
スマホを手に取って、確認すると。
さっき一緒にカラオケに行ってた連中からの連絡だった。いつの間にやらトークルームが作られてて、そこにポンポン、メッセージが続いていた。
……トークルーム作ったのは、勇紀だった。
『皆、お疲れー。先帰った玲央は今頃いちゃついてんのかな~?』
そんな勇紀の言葉が一番に入っていて、皆が面白がって、それに「キャー」だの、はしゃいでるスタンプだの、ポンポン入ってきてる。
……こんなくだらないので邪魔されたのか……。
はー、とため息を付いていると。
別の画面で勇紀からメッセージが届いた。そっちは、バンドメンバーの画面。
『玲央、お疲れ。優月がクラスで告白するって言ってたの、どーなったって? 大丈夫だったのか気になって。いちゃついてるとこだったらごめんなー』
なんて入ってきて、ふざけたスタンプと共に届く。
「まさにそうだったけど」と、怒りスタンプと一緒に送ると、「あわわ」という文字と、焦ったスタンプ。
ふー、と息をつきながら、優月を見ると、マグカップを両手でもって、こくこく飲んでる。
……和む。
どう見ても、可愛い生き物にしか見えない……。
さっさとやりとり、終わらせてしまおう。
「優月は、オレの名前は言わないことに決めてたみたいだったけど、結局オレが迎えに行ったから、一部にはバレたっぽい。でも、何となく大丈夫そうだった」
そう入れると、勇紀から、良かった、と入ってきて、続けて、颯也と甲斐からも、いいね、みたいな形のスタンプが入ってくる。
『邪魔してごめんなー。どうぞ続けてください……いや。やっぱ、あんまり優月を汚すなよー』
……また言ってる。アホ勇紀。
「だから可愛がってるだけだって言ってんだろ。ていうか、優月、何しても、汚れねーから」
ちょっとムカついてそう入れると、すぐに全員既読だけれど、少しだけ間が空いて。
『玲央、悪い。さすがに想定外すぎて、若干キモイ』
颯也からそう入ってきて、ち、と思った瞬間。
『確かに優月は汚れなそうだな。何しても、終わればけろっと、いつもの感じになってそう』
と、甲斐から。
「何してもとか、一ミリも、想像すんな」
と返すと。また数秒固まって。
『玲央の独占欲、こわいっつーの!』
泣いたスタンプとともに送ってくるのは、勇紀。
『マジで、怖い』
青ざめてブルブルふざけたのを珍しく送ってくるのは、颯也。
……普段スタンプとかつかわねーくせに……と思っていると。
『なんか、優月と付き合ってるとさ』
と、甲斐が入れてきて、数秒、続きを待っていると。
『優月が玲央で汚れるんじゃなくて、玲央が優月で浄化されてる感じだよな?』
そんな風に入ってきて、何と返そうか迷っていると。
勇紀と颯也から、大笑いしてる系の、スタンプが並ぶ。
『確かに―! 甲斐、ナイスー!』
『確かに、どんどん言ってる事、純粋になってきてるもんな』
『だろー?』
勇紀と颯也の返信に、甲斐が、得意げなドヤ顔のスタンプを送ってくる。
……浄化、か。
視線の先に、ぽわぽわとしてる優月が居て、オレの視線に気づくと、ふんわり微笑む。
――――……さっき、あんなに、乱したのになぁ。
……なに、あれ。清いまんま、みたいな。
こいつら、見てないのに、何で分かるんだか。
苦笑いで息をついて。
また明日、のスタンプを押して、スマホをテーブルに置いた。
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