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第526話◇

   ……玲央、起きそうにないや。  でもいいや。見てられるだけで、幸せすぎ……。  何だか、口元が緩んで、微笑んでしまう。  キスは、朝、させてもらおう……。  おやすみ、玲央……。   玲央を見ていた首を少しだけ戻して、目を閉じた。  その時。  玲央がもぞ、と動いて。  あれ。と思った瞬間。  玲央は、オレの背に手を回して、ぎゅ、と抱き締め直した。  ……寝てる?  すう、と寝息。  でも、なんかさっきよりも、すっぽり玲央に抱き締められていて。  ――――……オレが普段寝てる時も、もしかしていつも、  玲央はオレをこうやって、抱いてくれてるのかな。  しかも、玲央も、ほとんど、寝ながら。  無意識に、みたいな、感じで。  ああ、なんか、もう……。  ……玲央、大好き。  思わず、ふと笑って、額に当たってる玲央の顎に、少しだけスリスリして。そのまままた、目を閉じたら。 「……ゆづき……?」  どきーん、と心臓が弾む。  玲央って、目覚めすぎだと思うんだけど……! すっごく眠りが浅いのかな?? いま、オレ、ほんの少し、すりってしただけなのに。  オレが寝たふりしてたら、玲央もこのまま眠れるかな?  ――――……寝たふり、寝たふり……。  どきどきどきどき。 「――――……」  玲央の手がそっとオレの頬にかかってあげさせようとしてくる。  ね、寝たふり……。どうしたら。顔あげるべき?  えーっと……。 「ゆづき……?」  もうバレてるのかな。  仕方なく、手に逆らわず、顔を上げると、ちょっと眠そうな玲央と目があった。目が合った瞬間、玲央が、ふ、と微笑んだ。 「――――……起きてたのか?」 「……ちょっと前に……」 「喉乾いた? 平気か?」 「……ん、平気」  頷くと、玲央は、さっき飲ませといた、と笑う。 「ありがと……」 「ん」  クスクス笑って、玲央がオレを見る。 「何で起きた?」 「ううん。別に……なんか、目が覚めて」  そっか、と玲央は頷いて、すり、と頬を撫でる。 「……玲央」 「ん?」 「……キス、していい?」 「――――……いーよ」  クスクス笑って、ん、と微笑む唇。  そうっとキスして、離れると、玲央はおかしそうに、目を細めた。 「――――……何で聞くんだよ?」 「んー……何となく?」  ふふ、と笑って、玲央の腕の中に埋まる。 「……キスしたいなーって、思ってて」 「――――……? 今?」 「玲央が起きる前にね、ちょっとの間だけ、そう思ってたから」 「すればいいじゃんか」 「起こしちゃいそうで……」 「起こしていいのに」  クスクス笑って、玲央がオレをよしよし撫でる。 「……起きてくれて、よかったなー」  玲央がオレを抱き締めたままで、クスクス笑うのが、体に伝わる。 「――――……ゆづき」  少しして名を呼ばれて、顔を上げると、オレがしたのよりも深いキスが、唇に重なる。  しばらくして離れて。 「――――……これで、満足?」  やさしい声に目を開けると、ふ、と笑われて見つめられた。  ドキドキしながら、頷く。 「ありがと……」 「――――……キスして、礼言われるとか……」  玲央がまた笑いながらオレを抱き締める。 「ほんとかわいーな……」  玲央の、可愛い、は。  幸せになる、呪文みたいだなあ……なんて思いながら。  一緒にまた、眠った。      

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