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第528話◇

「――――……玲央……起きよっか」  しばらくくっついてたけど、そろそろかなと、そう言ったら。 「やっぱり今日はずっとこうしてようかなぁ……」  そう言いながらオレを抱き締める。 「……オレはいいけど」 「あ、いいのか?」 「うん……」  クスクス笑い合って、見つめ合う。 「でもするんでしょ?」  そう聞くと、玲央が仕方なさそうに頷いた。  それから、朝は順番にシャワーを浴びて、一日が始まった。  朝ごはんは二人で作って、一緒に食べた。  オレが片づけることにして、すぐに玲央は曲作りスタート。  奥の部屋に楽器が置いてる部屋があるから、そこに行くって言って、玲央は消えて行った。そういえば、一番奥の部屋は、まだオレ、入ったことなかったかも。……その隣の部屋も入ったこと、無いかな。  玲央と一緒にこの家に帰ってきて、お風呂入って、リビング行って、寝室……の日々だったようなと、思うと、なんだか可笑しい。  同じ部屋に居ていいよ、と言ってくれた。邪魔しないようにするね、と答えたけど。とりあえず朝ごはんの食器を片付けた後、お昼と夜の買い物をするために、下のスーパーに行く。  なんか。頑張ってる玲央の為に、ご飯考える、とか……楽しいな、と、ほくほく幸せに思いながら買い物終了。  お昼はサンドイッチにしようと思って、色々下準備。洗濯はもう乾燥まで終わってたから、全部畳んだ。あと掃除も済ませて、大体の家事は終わり。  ゆっくりコーヒーを淹れて、それを手に、玲央の居る部屋にそうっと入る。  わぁ、すごいなこの部屋……。  ピアノもあるし、キーボードやギターや……ここで何でもできちゃいそう。  玲央はパソコンに向かいながら、キーボードに触れていた。  ヘッドホンをしているので、オレが来たことに気付いてない。  入ってすぐの所にあるテーブルにコーヒーを置くと、ゆっくり玲央に近付いた。後ろからそっと腕に触れると。びっくりしたみたいにオレを振り返る。 「――――……優月」  ヘッドホンを首に降ろして、玲央が微笑む。 「玲央、コーヒー飲む?」 「ああ。ありがと」  目があって、微笑まれて。そんなことでなんだかとても嬉しくなってしまいながら。  オレは、コーヒーを玲央に渡した。 「優月、何してた?」 「んーと……家事と買い物と、お昼の用意」  そう言うと、玲央はコーヒーを飲みながら、ふ、と笑った。 「ありがと」 「お昼は、あとで持ってきてもいい?」 「ん。ああ、でも――――……先食べてていいよ。きりがいいとこで食べる」 「分かった。そうするね」  コーヒーを飲む間だけ少し話して、玲央はまた、ヘッドホンを付けた。  オレはマグカップを片付けてから、本とスケッチブックを手に、玲央の部屋へ。  部屋の隅にあるソファに、少し離れて座るけど、玲央は全然気づかない。  音は遮断されてるだろうけど、何となくオレが動いてるのは見えると思うんだけど。  すごい集中力……。  ここからだと横顔が見えるので、玲央の横顔をスケッチブックに描き始める。  前に玲央を、描いたのは初めて会って、誘われて、その誘いに乗るかを考えていた時。  玲央のところに行くかやめるか、考えながら、玲央の顔を、思い浮かべて描いてたんだった。  ――――……こんな風に、なるなんて。  あの時は、かけらも想像してなかった。  ……セフレがいっぱい居る玲央のセフレになる……というか。試しに、寝てみる……というか。男の人とそんな風になる、とか考えた事もなかったし。  なのに、玲央としたキスが、好きで。    セフレどころか恋人になれて。  ……こんなに、毎日大好きで、過ごせるとか。  もうなんか、いまだに夢の中に居るみたいな気がする。  不思議……。  少し止まって考えて。  何か口ずさんでたり。ギターで弾いてみたり。  ……絵になる人だなぁ――――……。  何時間でも、見てられそう……。  いつも、微笑んでオレを見る瞳が、ずっと違う方を見てて。  なんとなく伏し目がちにしてるから。すごく、綺麗。  楽器を弾く指先とかも、綺麗で。  大好きすぎる玲央を、白い紙に映し出しながら。  もうなんか楽しすぎて、ウキウキしてしまう。  

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