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第530話◇
ぎゅー、と抱き締めてくれてる玲央の手がオレの顎に触れて。
優しい仕草で、上向かされて。
「――――……」
ゆっくりゆっくり、キスされる。
舌が触れて。優しくて。自然と瞳を閉じて、全部預けていると。
笑った気配がして、玲央が少しだけ離れて。オレの頬をつまんだ。
「卵サンド?」
「……っ」
なんか。キスして、食べてるもの言われるとか。
恥ずかし……。
かあっと赤くなるのが、分かる。
玲央はクスクス笑いながらオレをのぞき込んで。
「あってる?」
そう聞いてくる。
「……あってる」
「そ。……なんで真っ赤なの?」
「……口の中で、分かるとか……なんか、やだ」
「なんで? おいしいけど」
クスクス笑ってそんなこと言われて、ますます赤面。
「……っ本物あげるから、早く……あ。今、食べる?」
「ん。食べる。優月もまだ食べてる?」
「うん、そう」
玲央から離れてキッチンに向かい、冷蔵庫からサンドイッチとアイスコーヒーを取り出す。玲央が隣についてきて、オレの隣に立った。
「玲央、アイスコーヒーでいい?」
「ん」
「牛乳入れる?」
一応聞くけど。
「入れない」
答えは、分かってたけど。
グラスに入れて玲央に渡すと、玲央がありがと、と言いながら一口飲む。
「苦くない?」
「うまいよ」
「オレは牛乳入れてちょうどいいんだけど……」
笑いながら玲央を見上げたら。
グラスをカウンターに置いた玲央に肩を抱かれて、そのまままたキスされる。絡んでくる舌に、声が漏れる。
「……っ……ん?……」
「――――……苦い? コーヒー」
ふ、と笑われて。すり、と頬に触れる。
……だから、顔、熱くなるってば……。
キスで味わうの、やめてほしいんだけど……。
チョコとかさ……アイスとかさ……むむ。サンドイッチが一番嫌かも……。
と思いながらも、なんだか、クスクス笑ってしまうオレ。
……だって、なんか、玲央がオレを見てるのが嬉しいなって。
思ってしまう。
「食べよ、玲央」
玲央の分のお皿を持って、テーブルのオレの隣に置くと、コーヒーを置きながら、玲央が腰かける。
「いただきます」
「うん。召し上がれ~」
さっきまでとっても静かで、ぼーと空をみながら、色々考えていただけだったから。
なんか。玲央が隣に居てくれるのが、嬉しい。
「美味しい」
玲央の言葉に、うんうん頷いてると、玲央はクスクス笑って、オレの頬にまた触れる。
「……寂しかった?」
「え?」
「すげえ嬉しそうに見えるから」
「寂しくは……」
ないよ、と言おうと思ったんだけど。
「……ちょっと寂しいかもだけど……でも、曲ができるの楽しみだから」
「――――……」
オレが言うと、玲央は、ふ、と目を細めて。
両手で、オレの両頬を包んでそのまま引き寄せて、むぎゅ、と抱きしめられた。
「なんでそんな、可愛いのかなー、優月……」
髪の毛、くしゃくしゃ撫でられまくる。
「寂しいかぁ、ごめんな?」
ごめんな、とか言いながらも。
なんだかすごく嬉しそうに、クスクス笑って。
オレをこねくり回している。
「――――……曲できたら、すぐ、聞かせる。一番に」
言ってくれた言葉が嬉しくて、うんうん頷いていると。
ちゅ、と頬にキスされる。
しばらくなんだかめちゃくちゃ可愛がられてる感じでキスされて。
ようやく離されつつ、くしゃくしゃになった髪を、玲央が笑いながら整えてくれる。
また二人でご飯を食べ始めながら。
目が合うと、笑ってしまう。
「……今寂しいって言っちゃったけどさ?」
「ん」
「ほんとに楽しみにしてるから、大丈夫だよ」
「ん」
「あと、真剣な玲央、カッコいいから。ずっと見てられる」
「――――……」
何だそれ、と笑われて。
また頭をナデナデされる。
……だってほんとなんだけど、な。
ずーっと見てられそうで。
「卵サンド、うまい。好きだもんな、優月」
「うん。好き。良かった、美味しい?」
「ん」
ふ、と笑ってくれる玲央に、オレもめちゃくちゃ嬉しくて、微笑んでしまう。
真剣な玲央、ずーっと、見てられるけど。
やっぱり、オレを見て笑ってくれてる玲央が一番好きだなあ。
ちょっと離れてると。
玲央の笑顔がどれだけ大切か分かるから。良いかもしれない。
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