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第533話◇
公園は、真ん中にグランド、その周りを広めの歩道が取り囲んでいて、大きな樹がたくさん植えられていた。
スポーツセンターもあって、遊具のある公園もあるので、歩いている人はかなり多い。
「すごい、人たくさん」
「だな。土曜の午後だしな」
結構賑やか……。
あたりを見回しながら歩いてると、玲央がオレをふ、と見つめる。
「午後、何してた?」
「んーと……あ、本読んでた。その前にシチュー作ったよ」
「夕飯?」
「うん。玲央、フランスパンでいい? お昼もサンドイッチだったから、ご飯の方が良かったら炊くけど」
「シチューはパンかな……別にオレ、パンが続いても、なんでも平気」
「ん、分かった。一緒に食べれる?」
「帰ったらシャワー浴びて、夕飯一緒に食べる。で、夜はキリのいいとこまでやることにする」
「良かった、一緒に食べれるんだね」
結局三食一緒に食べれそう。良かった。
ふふ、と笑っていると、玲央がオレを見つめる。
「……終わったら、めいっぱい構うから」
クスクス笑う玲央を見上げて。笑ってしまう。
「結構構って貰ってると思うんだけどな」
「そう? オレは、優月不足だけど」
「え。そうなの?」
「ん」
……そうなんだ、オレ不足……。
…………オレ不足って何……?と、おかしくなるけど。
オレがさっき玲央を充電したって言ってたのと、同じかな。
色々話をしながら、外周の半分くらい歩き進めたところに、噴水のある池があって、池のまわりにベンチが置かれていた。休憩スペース、みたいな気がする場所。
キッチンカ―みたいなのも停まってて、売店もあるし、より人が多い感じがする。
「優月、お茶買ってくる。何がいい?」
「んと……麦茶がいいな」
「OK、どっか座ってて」
玲央が、そう言ってオレから離れて売店に行くので、空いてるベンチに腰かけた。
「――――……」
池の周りで、小さな子達が楽しそうに遊んでる。
可愛いな……。
――――……今度、スケッチブック持ってきて、噴水の絵、描いてみよう。
綺麗だなあ。しぶきが、太陽に、キラキラしてる。
もっと陽が高い時間なら、もっと、綺麗かもしれない。
景色を見つめていると、玲央が戻って来た。
お茶と一緒に手に持っているのは。
「あれ。アイス、買ったの?」
「ん、食べるだろ?」
「食べるー! ありがと」
アイスのカップを受け取って「玲央のは無いの?」と聞くと、玲央はオレの隣に腰かけながら、スプーンを渡してくる。
「優月に貰う」
言いながら、麦茶を、ベンチに置いてくれる。
「チョコミントとバニラと、もいっこは何?」
「コーヒーにしたよ」
お茶を飲みながら、玲央が答えてくれる。
「どれ食べたい?」
「んー。ミントかな」
「ん……」
スプーンでチョコミントをすくって、玲央の口に、ぱく、と食べさせる。
「……おいしい?」
「ん」
クス、と笑って、玲央が頷く。
玲央に食べさせるって、新鮮で。ちょっとウキウキしてしまう。
「もっと食べる?」
「いや、もう――――……」
言いかけた玲央が、オレの顔を見て、ぷ、と吹き出した。
「え、何?」
「……いや――――…… もう一口、ちょうだい」
「ん!」
急いですくって、玲央の口に。
食べ終えてから、玲央がオレを見て、楽しそうに笑った。
「オレに食べさせるの、楽しい?」
「え。……あ、うん……ちょっと新鮮、って思った」
言うと、玲央は、ふ、と笑って、オレの頭をクシャクシャした。
「もういらないって言いかけたら、しょんぼりした顔すんだもんな……ほんと、可愛い」
しょんぼり? してたかな?
んー。
……確かにしたかもしれないけど。そんなに笑われると、ちょっと恥ずかしいけど。
でもなんか。
楽しそうな玲央、見てるだけで、楽しい。
「……優月と居るとさ」
「?」
「オレ、一生、笑ってられそうな気がする」
なんか、すごく嬉しいことを言いながら、玲央が、クスクス笑ってる。
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