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第534話◇
公園でアイスを食べて、一周ぐるっとお散歩してから、結局スーパーは寄らずに帰ってきて。先に玲央がシャワーを浴びに行ってる間に、食事の用意。
きっと、オレが居なかったら、玲央は一日集中してたんだろうから。
なんとなく、早く曲作りに戻ってほしくて。
玲央が出てくる前に、食事の準備を終えた。
「あれ。優月はシャワーは?」
出てきた玲央が食事の用意を見て、そう言うので、オレはあとでゆっくり入るよと答えた。
「ごめんな?」
「全然。謝んないで?」
そう言いながら、玲央を振り返ると。タオルで髪を拭きながらオレを見つめてくる玲央に、ちょっと見惚れてしまう。濡れた髪がいつもと違う感じで。
色っぽくて、カッコいい。……ドキドキする、濡れた髪の玲央って。
「――――……ん?」
ふ、と瞳を細めて、近くで見つめてくるから。
またまたそこから鼓動が速まる。
「……カッコよすぎ」
思わず言うと、玲央がちょっと固まって。
タオルで、口元押さえながら。
「優月がそう言うからさ」
「……?」
少し離れててもドキドキしてたのに、近づかれて、ウエストに玲央の手が触れて、至近距離に来られると。
なんかもう心臓が止まりそうな気がする。
「なんかオレ、最近この顔でよかったと思ってるんだけど。変?」
「え」
……最近、この顔でよかったと思ってる??
少し首をかしげながら考えて、それから、クスクス笑ってしまった。
「……ていうか、最近なの?」
「ん?」
「今まで、思ってなかったの?」
「特別何も思ってなかった」
「オレが、カッコいいって言うから、そう思うの?」
「そう」
クスクス笑って、玲央がオレを見つめる。
もう、なんなんだろう、これ。
ドキドキしすぎて、倒れる……。
「……あ、でも」
「ん?」
「……玲央が今の顔じゃなくても……好きかも」
「――――……」
「確かにカッコいいってすごく思ったけど……最初に、気になったのは、声と優しい笑い方とかだったし。顔が見たくなって、オレ、顔出したから……」
「――――……」
「玲央の今の顔が、今は大好きだけど……違う顔でも好きだったと思うよ? 玲央がカッコいいの、顔だけじゃないから」
初めて会った時を思い出しながらそう話してたら、急に、むぎゅ、と抱き締められた。
「優月は……」
「ん?」
「――――……いつも色々照れるのに、ほんと時たまそういうの平気でぺらぺら言うよな……」
「……え、だって……」
「こっちが恥ずかしいっつの……」
クスクス笑いながら、そう言われると、そういえば、ものすごい恥ずかしいこと言ってたかも……?
そう思うと、めっちゃ恥ずかしくなってくる。
それに。
お風呂上がりの玲央、いい匂い過ぎて、抱き締められてると、困る。
よく、このまま、ベッドに直行も多いから。
なんだか、少し、変な気分になりそうで、なんかちょっと、困る。
「……あー、なんかこのまま、抱きたいかも……」
「――――……」
なんか。同じこと。
考えてた。かも。……でも。
「――――……玲央、ごはん、食べよ?」
言うと、玲央はふとオレを見つめて。
ん、と頷いて、笑う。
「――――……我慢するよ」
ふー、と息をついて言う玲央が。
なんだか愛しくて。思わず、少し背伸びをして、ちゅ、とキスしてしまった。少し目を大きくして、玲央が俺を見下ろす。
「――――……またこういう時に、そういう可愛いことする……」
苦笑いの玲央。
「……オレも、我慢、だから」
「――――……」
言って、ごはん準備を終えようと動き始め……たけど、玲央に捕まった。
ぐい、と引き寄せられて、頬に触れられる。
「――――……我慢なの? 優月」
めちゃくちゃ楽しそうに笑う玲央。
――――……無駄に、色っぽい表情で、瞳を細めてオレを見下ろす。
ドキドキしながら、うん、と頷くと。
玲央は、ふ、とますます微笑んで。
「我慢させてごめんなー?」
なんて言いながら、すっごく、楽しそう。
言わなきゃよかった、めっちゃ恥ずかしい。って思うんだけど。
よしよし撫でながらキスされてると。やっぱり言ってよかったかな、と思う。
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