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第539話◇

「――――……」  カーテンから漏れる明るさに気が付くと、優月が、すり、とすり寄ってきていた。  腕枕からは落ちていて、ちょうど、顎に、優月の髪の毛がふわふわと触れる。  すぅ、と寝息。  すり寄って、熟睡してる。  ……朝から、可愛いな。  思えば、優月と知り合ってからは、ほぼ学校があったし、間の土日はライブだったりで結構忙しくて、そうそうゆっくりは出来てなかったんだよな。  昨日もだったけど、こうしてゆっくりしてられるのもいいよな……。  どうせ明日からまた学校だし。  優月の髪にそっと触れる。  柔らかい髪。……これだけで愛しいって感じるのが不思議。 「――――……」  そのまましばらく優月に触れたまま、頭んなかで曲作り。  その内、もぞ、と優月が動き始めて。ふ、と瞳を開けて、オレを見上げた。 「……れお」  ふにゃ、というのが一番ぴったりくるような感じの笑顔でオレを見て、「おはよ」と呟く。 「……おはよ」  むぎゅ、と抱き締める。 「昨日、何時に寝たの……?」 「三時くらい、かな」 「遅かったね……」  すりすりと、すり寄りながら、優月が言う。 「……今日も朝から頑張る?」 「ん」 「じゃあ、朝食べよっか」  もぞもぞ動き出そうとする優月を、「あと五分だけ」と言って、抱きとめる。 「――――……五分したら、起きて、朝食べたら、また続ける」  そう言うと、優月はオレの腕の中で、ふふ、と笑いながら頷いている。 「昨日オレ、あっという間に寝ちゃったよね」  背中にそっと腕を回しながら、優月がそう言った。 「ああ。早かったな」  クスクス笑ってしまうと。「なんか今も寝ちゃいそう」と優月が笑う。 「気持ちいい? オレとくっついてんの」 「――――……」  聞かれたセリフが恥ずかしかったのか、かあっと赤くなってから。 「――――……うん。気持ちいい」  と、笑う。 「なんか、安心して、眠くなっちゃうのかも」 「――――……」  ……なんか、ずっと安心させといてやりたいなあ、と思いながら、抱きしめる。 「……可愛い、優月」  オレは一体何回、優月にこの言葉を言うんだろうと思うと、言った瞬間、ちょっと笑ってしまった。 「……どして笑ったの?」  笑いを含んだ声で、優月が聞いてくる。 「……オレ、可愛いって言い過ぎかもな、と」  正直に言うと、優月もクスクス笑って「うん……」と頷いてから。 「でも、嬉しすぎるから、言っててくれて良い……」  そう言いながら、むぎゅ、と背中に腕が回ってくる。 「――――……ん。かわい、優月」  あ、また言ってる。  言ってから、気づいた。

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