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第543話◇
【side*優月】
昨夜ひたすら幸せに眠った。
で。……朝起きても、幸せで。一緒に朝ご飯食べて。
午前中は、本を読んだり家事をしたりしている内に時間が過ぎた。
そろそろお昼かなと思ってたら玲央が来てくれて、結局一緒に食べたのだけど、その前にソファでめちゃくちゃ優しくキスされて。
なんか。
――――……幸せだなあ……。
一緒に食べ終わった食器を片付けながらずっと、ぼー、と玲央のことを考えてる。
玲央はオレを幸せにしてくれるから。
……オレも、玲央を幸せにしたいな……。
オレに何ができて、どうしたら、ずっと居られるかなって、よく考えちゃうけど。
……オレは、ずっと玲央と居たいなぁって思ってて、玲央も今はそう思ってくれてるみたいだから。
このままの関係で居られたらいいんだろうけど。
……でも、そんなこと言ったら、世界中の恋人たち、誰も別れたりしないだろうし。
付き合い始めた時の、このままで居るっていう、そこが難しいんだろうけど。
――――……玲央と居れる時間が大事って。
居れる限り、ずーっと思ってよ……。
とりあえずそんな結論に落ち着いて、ちょうど食器も片付け終わった。
――――……何、しようかなぁ。
本さっき読み終わっちゃったし。
二冊目もあるけど。
窓際に近寄って、広い窓から、空を見上げる。
前に高い建物がないので、完全に開けっ放しでも、誰からも見えない。
空が、綺麗。景色、いいなぁ……。
……夕飯、何にしよう。
白いもくもくした雲を見ていると何かが浮かびそうだけど……。
なんだろう、あの形……。
――――……ああ、なんか、連なってて。
……焼き鳥にしようかな。
昨日モモ肉買ってきた。
……串はさすがに玲央の家にはなさそうな気がするから……買い物に行ってこよう。
焼き鳥と、出し巻き卵と、サラダとみそ汁。
よし、決定。
窓を網戸にして、財布をカバンを入れて、一応スマホを持って、玄関へ向かう。
世のお母さんたちも、夕飯のメニューが決まるとこんな感じですっきりなのかなあ、と、そんなことを思ったりもする。
ふんふん、と鼻歌気分で外に出た時。
手に持っていたスマホが、震え出した。
着信――――……。あ。樹里だ。
そういえばこないだ一樹の方から喧嘩したって電話が来て、そのあと樹里からはきてなかったな……。
仲直りしたのかと思ってたけど……。
「もしもし? 樹里?」
『あ、ゆづ兄?』
「うん」
『ねえ、今、家?』
「ううん、今出てる」
『ちょっと今日、ゆづ兄のとこ泊めて?』
「え。どうしたの? 明日も学校でしょ?」
『ゆづ兄のとこから行く』
首を傾げてしまう。珍しい。
「樹里、どうしたの?」
『……一樹がムカつくんだもん』
案の定のセリフ。
……それにしても。
――――……あれ、聞いたのいつだっけ。
もう何日か経ってるなあ。
「一樹にも最近ちょっと聞いたけど。続いてるの? 同じ話かな?」
『……多分』
「なんか、長いね? 喧嘩」
『――――……だって、すごく、ムカつくんだもん」
「……喧嘩してからちゃんとしゃべってないの?」
『うん』
「珍しいね」
クスクス笑うオレに、笑い事じゃないし、と樹里が怒ったみたいな声を出す。
「んー……最初何があったの?」
『もう覚えてない』
「え、覚えてないの?」
『最初は覚えてないけど、もうその後の一樹の態度が最悪で』
誰も居ないので、エレベーターもずっと色々聞きながら、スーパーの前に辿り着いた。
「オレ今から買い物してくるからさ。一番最初に喧嘩した理由を、思い出しておいてくれる?」
『もう覚えてないよー!』
「それでも考えてみて? 大事でしょ?」
『……わかった』
「じゃあまた後で連絡するから』
渋々な樹里との電話を切って、それから、一樹にメッセージを送る。
「樹里と喧嘩した原因、一樹なりのでいいから、オレに送ってくれる?」
そう入れたら、即座に「忘れた」と入ってくる。
苦笑いが浮かぶけど。
「思い出して、送ってね」
そう入れると、少ししてから、了解、と届いた。
――――……春休みに帰ったきりだから、すこし会ってないけど。
こんなに長いこと、喧嘩してるのは珍しい。
あんなに普段よく喋ってる子たちなのに、喋れてないなら、もうそのことがストレスなんだろうなあ……。
さてさて。
……二人、何て言ってくるかなあ……。
同じならいいけど。
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