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第544話◇

 ほんと、喧嘩がこんなに長引くのも珍しいし。  ……ていうか、樹里、うちから学校通うって。小学生なんだからさ。それ絶対オレが送り迎えすることになるよね。面白いなぁ……笑ってしまいそうになりながら。  夕飯に必要なものを色々買ってから、店を出た。  一樹から届いていたメッセージを見ると。 「樹里が、先にオレの悪口言った。オレのこと、だらしないとか、なんか色々。だからオレも、口うるさいし、全然可愛くないって言った。そしたら、オレのとっといたプリン、食べやがった」  と、入ってた。  あー……。  ……もう、苦笑いが完全に浮かんでしまう。  一樹、プリン好きだもんね……。  ……樹里、そんなことしちゃうかなぁ……? 知ってるはずだけど。  後で電話するね、と一樹に入れて、ちょっと考える。  さて、どうしよ。  ……とりあえず、樹里……。  ――――……家に帰って、目の前に二人並べるのが一番早いんだけど。  そう思いながら、樹里に電話を掛けた。  スマホを二人が持ち始めたのも最近。  小学四年生になって、習い事に一人で行くようになったから、使うようになったらしい。  今の子は、早い子だと、五年生位から思春期が始まるって言うし。三、四年生はギャングエイジとか言われる年だって。家族よりも友達が大事になる時期だったりするって、こないだの児童心理の授業でも聞いたばかり。  ……まあ、まだオレに頼ってくれるのは、可愛いけど。  ふふ。  呼び出し音を聞きながらそんなことを思っていると、樹里の声。 『ゆづ兄?』 「うん。思い出した? 喧嘩の理由」 『うん。一樹がね、あたしの漫画を借りてって、それをね、すごい適当に転がしてたから、カバーとか、ぐちゃってしちゃって』 「うん」 『一樹ってほんとだらしなくてやだって、友達と話しながら帰ってたらさ、それを聞かれちゃったみたいで』 「……あぁ、なるほど」  一樹は、その漫画の件、多分認識してないんだろうなぁ……。  急にだらしないっていうワードだけ、入ってきたのかな。   『そしたら、なんか、うるさいとか、可愛くないから、彼氏なんかできないぞーとか、すごいやなことばっかり言うから』 「うんうん……」 『大喧嘩になって……それから口きいてない』  なるほど。 「……樹里、一樹のプリン食べちゃった記憶ある?」 『……お母さんが食べていいよって』 「え。そうなの?」 『なんかお父さんが食べてないって勘違いしてたみたいで、食べていい?て聞いたらいいよって言ったの。そしたら一樹ので、でも、一樹、わざと私が食べたとか言って、お母さんの話も聞いてくれないし、もうすっごいむかつくのー!!! だからゆづ兄のとこ行っていい?』  最後の質問に、笑ってしまいながら。 「でも学校あるから、無理でしょ? オレ行きは送れるけど、帰りは迎えに行けないから。仲直りした方がいいよね?」 『無理だよ、あれー。めっちゃ態度ひどいもん』 「――――……んー。そうなんだ。分かった、じゃあ、あとで、一樹にも電話してみるから。とりあえず、オレいったん買い物したものとか片づけちゃうね」 『ゆづ兄はどこにいるのー?』 「ん?」 『おうちに居ないんでしょ?』 「あ。うん……とも、だちの、家に来てる」  ……「友達」のところでちょっと詰まってしまったけれど、樹里は気づかず、そうなんだーと頷いてる。  友達。  ……っていうのは、ちょっと大分違うなあ……。  そう思ったとはいえ、こんなことで詰まってたら。  ――――……玲央と一緒に実家行った時、どれだけ詰まるんだろう、なんてちょっと思ってしまった。

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