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第545話◇

「じゃあまたあとで連絡するからね、樹里。一回切るよ?」 『うん、わかったー』  電話を切って、エレベーターに乗り込む。  まあ。なんとなく話は分かったけど。  ……元は、ちょっとしたすれ違いだなあ……。  あと一樹は絶対、プリンだな。と、可笑しくなってしまう。  近くに居たらすぐ話すんだけど。  ……母さんは兄妹喧嘩にはあんまり入らないからなあ……。  どうしよっかな……。  とりあえず、部屋に戻って、買い物片付けたら一樹に電話かな。  そう思いながら、玲央の部屋の鍵を開けて中に入ると。 「おかえり」  玲央が迎えに来てくれた。 「優月はどこだろって、ちょうど探し始めたとこだった」  クスクス笑いながら、玲央が近づいてきて、すぽ、と抱き締めてくる。 「玲央、休憩?」 「んー、休憩というか……まだそんな経ってないしな。あと少しなんだけど、完全に進まなくなってさ。気分転換した方がいいかなって」 「そうなんだね。今、買い物してきた」 「ん」  玲央の腕から少し離されて、一緒にリビングに入る。 「玲央、オレ、今から実家に帰ってきてもいい?」 「ん?」 「なんか喧嘩が続いてるらしくて、拗れてるからさ。電話で話してるより早いかなーって思って。顔も見たいし」 「ああ……双子、喧嘩中?」 「うん。こないだの電話の時からみたい」  色々片付けながら、隣に居る玲央に二人の喧嘩のあらましを話す。 「全然大した内容じゃないんだけど、なんか意地になってるだけな気がするから……ちょっと行ってくる。夕飯、作れる時間には帰ってくるから」  そう言って、玲央を見上げると。  んー、としばらく考えていた玲央が、ニヤリと笑った。 「オレも行こうかな」 「……え???」 「気分転換。うまいプリン持って、顔見せに行こうかな」  ん??  玲央……???  本気で言ってる?  玲央を見上げて、首を傾げてしまう。 「車で行けばそんな掛かんないだろ。挨拶はまた今度ゆっくり行くから。ちょっとだけ顔見せに。ていうか、オレが見たい」 「――――……え、本気で?」 「うん」 「曲は?」 「だから、気分転換だって」  玲央はめちゃくちゃ楽しそうにそう言って笑う。 「駅ビルにプリンの店、入ってたからさ、そこ寄ってから行く?」 「……」 「こないだ優月のチョコ買った時に見かけたんだけど、あん時はそのままデートだったから、プリンは買わなかったんだよな」  言いながら、玲央は、出かける準備を始めてて、財布とかスマホを持って、テーブルに置いた。 「あと車のカギか――――……」  言いながら歩きだそうとした玲央に、オレが「ほんとに行くの? 玲央」と聞くと。 「え、本気だけど――――……あ、行っても良い?」 「え、良いよ……っていうか…………良いの?」  オレが聞くと、玲央はオレを見て、「キリねえな?」と、可笑しそうに笑った。 「行きたいんだけど、オレ」  玲央の手がオレの頭にかかって、よしよし、と撫でて。  ちゅ、と、短くキスされる。 「ドライブして、仲直りさせて、帰ってこよ」  すぐ目の前にある、キラキラした優しい瞳に。  嬉しくなって、うん、と頷いて。  むぎゅ、と抱きつくと、笑う玲央に抱き返された。  

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