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第547話◇
「大学で仲良くしてる人で……」
オレが言って、玲央を見ると、玲央は、それはそれは綺麗に微笑んだ。
「神月玲央です」
母さんの方を向いて。
興味津々で母さん側に立った双子にも向けて、そう名乗る。
しゃべったらますます皆が呆ける。
「初めまして」
惚けてる三人に向けて、玲央がふ、と笑うと。
「あ、っと…… とりあえず、どうぞどうぞ、中に……」
やっとのことで気を取り直して、母さんと樹里が、笑顔になる。
「……イケメンすぎ。……何者???」
ぼそ、と一樹が言うので、思わず笑ってしまう。
「何者って……こんにちは、でしょ?」
一樹の頭に触れて、一緒に玲央の方を向く。
「……こんにちは」
照れたみたいに、ぼそっと一樹が言うと、玲央はちょっとかがんで一樹と目線を合わせると。
「一樹?」
と笑った。名を呼ばれた一樹は、ちょっと驚いた顔をしたけれど。
すぐに、ほわっとした笑顔で、うん、と頷いた。
「よろしく」
そういった玲央に、うんうん頷いてる。
……ん。落ちた? と、可笑しくてしょうがない。
「樹里、だよね?」
樹里はもっと分かりやすい。
呼ばれた瞬間、ほわわー--、とめちゃくちゃ嬉しそうに笑う。
「うん! お兄ちゃんの名前は?」
さっき名乗ってたけど、全然聞こえてなかったのかなと思うと、可笑しい。
「玲央、だよ」
「玲央くん、でいいの?」
「良いよ」
「うんっ」
めちゃくちゃ嬉しそう。
あ、もう樹里も落ちたな……。なんて思ってしまう。
母さんはさっき一瞬呆けてたけど、もう気を取り直して大丈夫みたい。
「どうぞ、入って」
言いながら、玄関への階段を先に上がっていく。
「入ろ、玲央」
「ん」
オレと玲央が母さんに続いて家に入ると、後から一樹と樹里が一緒に階段を登ってくる。ふ、と二人、視線が絡む。むっとした顔を、してはいるんだけど。
――――……多分、ほんとは。一緒に玲央のこと、叫びたいんだろうなぁ、なんて思ってしまって。
素直になればいいのになんて思うと、意地を張って視線を外してる二人が、何か、可愛い。
中に入って、テーブルにプリンの紙袋を置く。
洗面所で手を洗って戻ると、二人が紙袋を覗いていた。
お。二人、近い。
「ゆづ兄、プリン?」
樹里が嬉しそうに笑う。
「うん。玲央が買ってくれて。ね」
玲央を振り返って言うと、ん、と玲央が頷く。
ありがとうね、と母さんがお礼を言ってる。
母さんと玲央が話しているのを聞いていたら、唐突に。
――――……なんか、玲央がここに居るのが、不思議すぎる。
ていうか、嬉しすぎる……。
そんな風に思って、じっと見つめてしまう。
「優月、紅茶入れる?」
母さんの言葉に、はっと気づく。
「あ、うん。ありがと。玲央、そこ、座ってて?」
「ん」
玲央が立っていたところの椅子を引いて腰掛けると。
双子たちがとことこ、玲央の隣に行く。
オレは食器棚の引き出しからスプーンを四つ取り出した。
「ゆづ兄と仲良しなの?」
「うん。そうだね」
樹里の質問に、玲央が笑って答えてる。
オレは、紙袋からプリンを取り出して、スプーンと一緒に並べていく。
「めっちゃうまそう……」
一樹がじーと、プリンを見つめている。
「食べていいよ?」
オレがそう言うと、一樹は、玲央の方を見て、「良い?」と聞いてる。
「もちろん」
クスクス笑って頷く玲央。
――――……めちゃくちゃ、カッコいい人だよなあ……。
少し離れて、いつもと違うところで見ると、余計に感じる。
笑顔を向けられた一樹と、隣に居る樹里が、嬉しそうに笑う。
ああもう、あと少し、な気がするんだけどなあ。
……仲直り。
ふ、と微笑んでしまう。
六人がけのテーブルの、真ん中に玲央、その隣に樹里、玲央の正面に一樹が座る。
二人は、プリンの蓋をとって、スプーンを持って。
一口、ぱくっ。
「「うっま」」
二人の声が重なる。
瞬間、二人、視線を合わせた。
玲央がすっごく面白そうな顔で、二人を見比べている。
「……うまい?」
クスッと笑いながら、玲央が二人に聞くと。
二人は、同時に、「うんっ」と頷く。
頷いた二人が、ふと視線を合わせて。それからまだちょっと気まずそうに、すぐ視線を逸らすけど。
――――……多分、もう、あと少し。
ぱくぱくプリンを食べてる二人に、ふふ、と笑ってしまっていると、オレを見上げる玲央と視線が合う。
玲央がちょっと笑って、ほんの少しだけ、頷いてくれる。
双子に優しく接してくれてる玲央も、なんだかとっても大好きで。
うん、と頷き返した。
(2022/9/19)
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