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第554話◇
食事の用意を終えたところで、ちょうど部屋から出て来てくれた玲央と隣に座って、食事を始めた。
もう言いたくてしょうがなかった、さっきの電話の話を玲央にしたら、「BLかぁ……」と一言呟いた後。口元を抑えて、クッと笑い出した。
「……なんかあれだな。樹里は女子だなー」
「うん……なんかすごく、耳だけマセちゃってるっていうか……噂話とかおしゃべり好きだから……」
「一樹は可愛いな。男子ってそんな感じだよな」
「うん。よくわかんないけどって言ってた」
電話の向こうの二人を思い出すと、クスクス笑ってしまう。
「オレね、男同士で付き合うとかって、やっぱり、世で言う普通ではないから……二人には何て話したらいいのかなーって、すごい考えてたんだよね。もうちょっと大きくなって、同性でとか、ちゃんと意味が分かるようになったら、ゆっくり話そうかなって」
「うん」
「……なのに、BLだーって……なんかすっごくのんきな声でさ……」
トホホな気分で、オレが言うと、玲央がまた笑う。
「完全にちゃんと意味が分かってって感じだった?」
「樹里は、大体わかってるーて言ってたけど……」
「……何を見て、分かってるんだろ」
クスクス笑いながら、玲央が焼き鳥を食べて、「あ、美味い」とオレを見つめる。トホホだったオレは、途端に嬉しくなって、超笑顔になってしまった、と思う。
「あ、よかった。一樹たちも、焼き鳥が好きでさ。さっきもまた作ってねって言われて」
「そっか。また行こうな――――……とりあえずは、あれだよな」
「ん?」
「じいちゃんとこ行って、ちゃんと話して、そしたら優月の家行こ。……もしかしたら、一樹も樹里もそん時話すかも? かな」
「……ほんとは、ずっと先かなあって、さっきまで考えてたんだけど……」
さっきのあの感じだと、多分、玲央とオレが一緒に姿を現せば現すほど、きっと確信していくのだろうし……。
「…………一緒に、話す、かもしれない……」
「ん。いーんじゃね? なんか、大丈夫そうな気がするから」
玲央は即答で、クスクス笑う。
「優月の家族に、隠したくないし。……まあ、優月が、家族とぎくしゃくする可能性があるなら隠すけど、あの感じなら……」
「感じなら?」
「オレ、すげえ可愛い弟と妹ができるな、と思ったんだよな、今日」
なんだかめちゃくちゃ優しい顔をして、玲央はオレを見つめる。
「二人が、男同士なんて嫌だとか思わずにいられるなら、言った方がいいよな? あの二人に隠し事、嫌だろ?」
「――――……」
……うぅ。
もう玲央ってば……。
オレは、隣に座ってる玲央に手を伸ばして、むぎゅ、とその首に抱き付いた。
「……優月?」
笑いながらも、玲央の手が背中に回って、優しく抱きしめてくれる。
「玲央ー……」
「ん?」
「んー……大好きー…………」
「――――……ん……」
クスクス笑われて、くっついてる頬に、すり、と顔を寄せられると。
ますます大好きすぎて、きゅうう、としがみつく。
「優月?」
……もうほんとに、大好きだよー……。
なんだかいっぱいすぎて言葉にできず、心の中で叫びながら、むぎゅぎゅ、と延々くっついていると、ますます玲央が、笑う。
玲央が笑うと、その体が揺れる。
なんかその振動すら、愛しい。
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