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第557話◇

 何て言えば恥ずかしくないかを、とりあえず、めちゃくちゃ考えてみた。 「……その……」 「うん?」  玲央はまだとっても楽しそうなまま。  うぅ。恥ずかしすぎる……。 「……玲央と、するのが初めてのこと、いっぱいあるから」 「――――……」 「それは、全部、好き……」 「――――……」  これで、終わりにしてくれるといいんだけど……。  そう思っていたら、玲央は少し黙ってたけど、その内、ふっと瞳を緩めた。 「――――……可愛いけど」 「……??」 「あとで、ベッドで、全部言って」 「…………」  ベッドで……。  …………っ。 「む……」 「む?」 「む、り……」  顔が、熱い。  かろうじて言ったその言葉に、玲央は、クッと笑い出した。 「何が好きか、言ってくれたら、ぜーんぶ、してやるよ?」 「…………っっ」  ぷるぷるぷるぷる。  めちゃくちゃ首を横に振る。 「何で? 好きなこと、全部してやるって、言ってるのに」  そう言いながら、玲央の手が頬から項に滑って、そこで、すり、と撫でてくる。 「……っ」  ……もう本当、こういう時の玲央の瞳や表情は、ほんと、なんか、男っぽい……というか。……色っぽくなっちゃうというか……わざとやってるならすごすぎるけど……しようとしてないのに、これならほんとに……。  絶対勝てないんだよね……。 「……言うのとか……無理」 「――――……ふーん?」  クスクス笑われて。玲央をまっすぐ見つめる。 「……ほんとに、玲央が……好きなようにしてくれて、いいから」 「――――……」  目の前の瞳が、余計に面白そうに、キラキラしてくる。  ……それを見て、何か言い方、間違ったかも……と思ったら。 「きっと優月は、いっこずつ言うのが恥ずかしいから、そう言ったんだろうなあって、分かってはいるんだよな、オレ」  あ、そうそう、そういうことです。  大丈夫だった、ちゃんと伝わってる。良かった。  そう思った時。  項に触れていた玲央の手に、ぐい、と引き寄せられて。 「っん……」  急に唇が塞がれて、急に、舌が入ってきて、急に、玲央の舌が絡んできた。 「……っ……っ……ん、っ……?」  とっさに藻掻こうとした手は、玲央の右手に軽くつかまれて、玲央の左手は、ずっと後頭部を押さえてて。 「――――……んン……ぅ」  ……息が。  全然ちゃんと、できない。    しばらくして、ゆっくり、唇が離れて。  はぁ、と、息を吐く。なんかもうこのまま、玲央に、よっかかってしまいたいくらい。なんか、ぼんやりしてる。視界がぼやけてるのは、涙かな……。 「……ちゃんと分かってんだけど――――……好きなようにとか、言われると……」  ぼんやりしてる、オレの目を玲央が親指でこすってくれて。少しはっきりした瞳に、玲央の苦笑いが映る。 「好きにしていいのって思うと――――……もーいますぐベッドに連れ込みたくなるな……」  そのままスリスリと頬を撫でる玲央の瞳は。  もうなんか、何をしても、絶対敵わないくらい、色っぽくて、キラキラだし……。 「もうちょっと気を付けて話しな? 優月……じゃないと」  もう何を言われても、何をされても、もう、全部恥ずかしいのに。 「オレにぜんぶまるごと、食べられちゃうから」  とか言われて。  もう、恥ずかしさと、胸がきゅんとするのとで。  なんか……ちょっと、心臓の音がすごすぎて、死にそう。 「……玲央。オレ」 「ん?」  ちゅー、と頬にキスしてた玲央は、オレを至近距離から見下ろして、にっこり笑いながら、相槌を打ってくれる。   「何? 優月」 「――――……玲央ならいいよ? なんでも」  そう言ったら、玲央は、じー、とオレを見て、そのまま、むぎゅ、と抱き締める。 「……だから、それなんだけど……はー……なんだかな……」  オレを抱き締めたままで。  玲央がなんだか、ちょっと困ったように呟いてる。

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