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第558話◇

 なんだか困ったような顔をしてた玲央は。ふ、と笑い出して。 「とりあえずオレは、終わらせてくる」  と言って、オレをいったん離して、食事に向き直った。 「……ねね、玲央?」 「ん?」 「写真てさ、バンドの皆では撮らないの?」 「活動として、てこと?」 「そぅ、バンドの宣伝とか?」 「撮るよ」 「それは、嫌じゃないの?」  そう聞くと、そうだなあ、と玲央が言って。 「化粧もするし、ちょっと、自分じゃないみたいな感じかな……」 「そうなんだ」 「普通にしてる時に、急にカメラ向けられたり、笑ってとか言われるのが嫌だった感じ」 「なるほど、そうかー」  あ、でもなぁ。高校生の時とか、スマホを学校に持ってきても良くなった頃とかは、皆、写真撮りまくってたような気がするけど……。でもきっと皆で撮ろう、ていうのと、玲央と撮らせてっていうのは、きっと違うんだろうなぁ、と勝手に予想したりする。 「どした?」 「いや……なんか、カッコ良すぎてモテちゃうのも、ほんとに大変だねぇ、と思ってさ」 「――――……何考えてたんだよ?」  苦笑いの玲央がオレを見て、そんな風に聞いてくる。 「うーん、なんか想像してた、写真撮ろうーって皆に言われてる玲央を」 「まあでもオレ、優月と撮る写真は全然嫌じゃないから。撮ろうな」 「うんうん、撮ろうね」  ふふ。嬉しい。  ……は。でもな……。  と、少し考えているところで、玲央が笑う。 「今度は何?」  すぐ突っ込まれる。思わず苦笑いが浮かんでしまうけど。  いっつも悟ってくれるのも、嬉しい気もする。   「んー……でも、オレも、玲央が居ないところで写真見て、玲央のこと、見ちゃうかもしれないと思って……ていうか見ちゃうと思うんだけど」 「――――……」  玲央は呆れたようにオレを見て、ぶに、と頬をつまんだ。 「オレが、優月に見られてるのも嫌だっていうと思ってるなら……もうほんとに、アホだけどな」  クスクス笑って、玲央が言う。 「……ない、かな?」 「聞くなよ」  ふ、と玲央が笑う。  そのまま頬から手を離して、ごちそうさま、と言った。 「おいしかった。ありがと」 「うん、良かった。あ、片付けるから、続きしに行っていいよ」 「――――……ん、終わらせてくる。ありがと」  ナデナデされて、うん、と頷くと、玲央が、戻っていった。 「――――……」  撫でられて嬉しいとか。  ……オレ撫でられやすい傾向はあって、まあ、玲央じゃなくても、撫でてくる人はたまに居るのだけれど。  ……でもやっぱりよく考えれば、ちょっとは、どうして撫でるのかなあって、思う時もあったような。  女の子に、「きゃー、優月くん、かわいー」とか言われて撫でられると。  ええなんで??と思うことはあったし。  女の子に、可愛いって言われるって、だって、基本、絶対女の子の方が可愛いのに。なのに可愛いって言われると、なんかものすごく恥ずかしいし。  とにかく今までわりと撫でられることも多くて。  まあ多いからそんなに気にしないようにしてたというか。 「――――……」  玲央に頭撫でられて、見つめられるのは。  なんかもう素直に、嬉しくて。  ……もっと撫でてって思っちゃうんだよね。    ……キスも。  触れるのも。  その先も。  全部全部、玲央が初めてで。玲央とするから、好きで。  …………いっこずつ好きなの言ったら、全部してくれる、だって。  さっきの玲央の言葉を思い出すと。  また勝手に、熱くなる。玲央に見られてるわけでもないのに。  オレ、これ、赤くならなくなる日、くるかな……と思う。

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