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第560話◇
しばらくソファでほこほこと幸せに浸った後、シャワーを浴びた。
ここでお風呂入るのも、もう何日目だっけ……。
最初、違和感しかなかったこの広いお風呂も、玲央と一緒に入ることも。
なんかもう全部ドキドキだったし。
でも、少しずつ、慣れてきた。
玲央と同じ香りの、シャンプーも、ボディソープも。
――――……寝る前の玲央の、くっつくと香るくらいの優しい匂い。
バスタオルで体を拭いて、部屋着を着る。
最初に行ったマンションにはバスローブが置いてあったけど、この家には無かったのは、この家にそういう相手を連れてこなかったから、みたいだけど……。オレがここに来てから、すぐベッド行く時はバスローブの方が楽とか言って、玲央が買ったんだけど……楽なのはなんか、すごく分かる気もするのだけど……。恥ずかしいんだよね。バスローブ着ると。すぐ、するのかなあ……って。ドキドキも止まらなくなっちゃうし。
――――……玲央は、色んな人と経験あるから、経験値みたいなのは、絶対おいつくことはないんだろうなあと思うし。
でもあれだよね、すっごく上手な人としてるから、オレもその内、上手に………………ならないかな?? してもらってばっかりな気が。
…………むむ。
「――――……」
ドライヤーで髪を乾かし始める。
玲央と入るといつも乾かしてくれる。優しい手つきで、なんだか大事そうにしてくれるから、本当にその時間が大好きだなあと、日々思う。
……ちょっと、寂しいかも。
自分でやってた当たり前のことなのに。
でも、なんだか玲央がしてくれることが多すぎて、いいのかなあと思うことが多いから、昨日や今日みたいに、色々してあげられたのは、なんだかとっても良くて楽しかったかも。
ご飯も、玲央が作るものってなんか、すごい上手というか。
ほんと、何でも出来る人だよなぁ……。カッコいいな……。
ってオレは、今何を考えてたんだっけ……。
考え事の出だしがさっぱり分からなくなって、ぼんやり、鏡を見ながら髪を乾かす。
オレが玲央を大好きってこと……??
……だったかな?
まあ結局何を考えてても、そうなんだけど。
そんなことを思っていたら、ふと、苦笑いが浮かぶ。
……こんなことばっかりいつも思ってて、もしかして自然と大好きって顔で玲央のこと見てるから、樹里にまで、あんなこと言われるのかな。樹里があれってことは、やっぱり母さんは、もうほぼ、確信……かな。
カチ、とドライヤーを止めて片付ける。
バスルームを出て、キッチンでお水を飲んで、これからどうしようかなと考えていたら、玲央がやってきた。
「あ。シャワー浴びちゃった?」
「うん。今出た」
「一緒に浴びようと思ったのになー」
言いながら、近づいてきて、そっと頬に触れる。
「ほこほこしてる……」
クスクス笑う玲央に、すり、と撫でられる。
「今日はもう終わり。ほぼ出来たから、皆に聞かせてから、仕上げる」
「あ、終わったんだ。お疲れさま」
嬉しくなって、ついついめちゃくちゃ笑顔になってしまうと。
「すげー嬉しそう」
「――――……」
あ。つい。
……嬉しそうすぎた??
「ごめんな、寂しかった?」
「全然大丈夫だよ、謝んないで?」
「ん、でも……今めちゃくちゃ嬉しそうだったから」
クックッと笑いながら、玲央はオレの髪を撫でて、少しかがんで唇を重ねてくる。
「――――……」
唇、合わせるだけのキス。
「――――……聞く? 曲。一番に」
触れそうな位近くで見つめられて、そんな風に言われる。
聞く聞く!
めっちゃくちゃ、うんうん頷くと、玲央が、おかしそうに笑いながら、オレの手を引いた。
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