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第571話◇

 一限の皆に告白したまま授業を受けて、その内の数人と一緒に二限に行ったら、また別の友達と合流してその話になって、結局そこでも、改めて話す事になった。  ……まあ、そうなるだろうなあと思って言ったから、良いのだけど。 「優月が男とか~……」  なるほどー、みたいな顔で頷いてたり。 「相手、誰か聞いてもいいの?」  と聞いてきたりする。興味津々ではあるのだけど、「相手のことは、もう少しだけ待って」と言うと、皆、分かったというような顔をしてくれる。  ちょっとした質問に答えていると、また教授が入ってくる。  休み時間は移動でほとんど終わるから、そんなに深く突っ込まれることもなくて、少しだけ話して、授業に入る感じ。  一限の前に告白した皆も、最初は少しびっくりしていたけど、多分授業中に色々考えて、自分で少し落ち着いてくれるみたいで、一限が終わった時には、もう普通の顔をしていた。  ――――……なんかほんと。  ……皆、優しいというか。ありがたい、なあ。  もしかしたら、心の中では、気持ち悪いって思う人も居るかもしれない。  「嫌だなーオレは無いなー」と思ってる人も、もしかしたら居るかもしれないって思う。  やっぱり、歓迎ばかりされる関係ではないよなあって、思うんだけど。  けど、それを皆の前で、オレにぶつけてくる人は居ないみたい。    顔に出さないでくれるだけでも、すっごくありがたい。  そんな風に思いながら、教授が前のホワイトボードに書いていくことを、ノートに写していたら、ふと気づいた。  なんかそういえば――――……。  今までもう、何人も、玲央とオレのこと、話してきたっけ。  最初は、美咲と智也に話したら、最初は美咲は嫌がってたけど……玲央に対する誤解が少し解けたら、見守ってくれる感じになってくれたし。  蒼くんにも久先生や希生さんや、バンドの皆にも。  稔とか、玲央の友達にも。  それから。もしかしたら家族も。皆うすうす感づいてそうな感じ。  なんか。すごく、まわりの人達に知られてきてるけど――――……。  皆、どうしてもやめとけって、言わないなぁ……。  何だか、そう思うと、じーんとちょっと感動。  賛成ばかりされるとは思わない。  いくら、世の中が、そこらへんに寛容であろうとしていたって。  自分の友達や家族が、男同士でってなった時、手放しで歓迎するかって言ったら……きっと、できないことだって、普通にあるだろうなあって思うのに。  どうして皆、そんなに、優しいんだろう。  とりあえず、玲央は大丈夫だって言ってくれるし、金曜のクラス会の皆の中にはもう分かっちゃった人も居るとは思うんだけど……相手が玲央だってはっきり言うのは、やっぱり、少なくとも希生さんに聞いてからがいいけど……。  ――――……皆と話す時に、オレが付き合ってる人が「彼女」だって話して、濁しながら相槌を打つ、とか。  そんなモヤモヤすることをしなくて済むって。  やっぱり、すっごく、嬉しい。  玲央と付き合ってること、隠すとか。  できたら、したくないし。 「――――……」  玲央と付き合うようになってから、周りの人達のことも、もっとすごく好きになってる気がして。  なんかそれも嬉しいなあ、と。  ただひたすらに教授の文字を追って書き写しながら、ふ、と顔が綻んでしまう。

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