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第582話◇
一緒にサラダも作って、先に焼けたシラスのピザと一緒に、食事を始める。
「柚子胡椒、おいしーね」
「そうだな」
「双子たちも好きそう。今度教えてあげよ」
「ん。柚子胡椒、好きなの?」
「うん、焼き鳥とか好きだし」
「ふーん……そうなんだ。居酒屋メニュー好き?」
「うん、そうそう。好きだと思う」
「そっか」
玲央がオレを見て、「いつかあの二人と、居酒屋で酒飲んだりするかもな?」と楽しそうに笑う。
「――――……」
「あ、先のこと過ぎた? つか、オレ達もまだ飲めないもんな」
黙ったオレに、勘違いした玲央が笑いながら、そんな風に聞いてくる。
「違うよ」
「ん?」
「……ずっと先のこと、そういう風に話してくれるのが嬉しくて、固まっちゃっただけ」
「――――……ああ。そういえば」
玲央は少し考えてから、オレを見て、ふ、と微笑む。
「自然に出てるな、ずっと先のことも」
「――――……」
なんか玲央って、オレを、キュンキュンさせて、心臓を止めようとしてるんだろうかという位に……胸が痛い。
一気に真っ赤になるというよりは、なんだか、返事をできないまま、玲央はもう普通にピザを食べてるのに。オレだけ、ずーっとじんわり、顔が熱くなってくるというか。
玲央って。
……玲央ってほんと。
うぅ。胸が……。
「優月?」
なんか不思議そうな顔をして、玲央がオレを見てくる。
そんな不思議そうな顔されても……。全然分かってないで、そんな嬉しすぎることを平気で言って、オレがすごく胸がやられれても気づかないとか。
……ああ、なんかもう、玲央って……。
「玲央……」
「ん? あ」
その時、オーブンがピーピー鳴って、二枚目のピザが焼けた。
「取ってくるから待ってて」
「うん……」
立ち上がってオーブンの蓋を開けて、「優月、すごい美味そ」と玲央が言う。立ち上がって、玲央が取り出したピザを見にいく。生地にマヨネーズを塗って、ジャガイモと玉ねぎとウインナーとチーズたっぷりのピザ。
「ほんとー。美味しそう」
「な?」
玲央が包丁でピザを切りながら、「ピザカッター、買おっか?」と言う。
「包丁でも切れるけどね……チーズがくっついちゃうかな?」
「まあ大丈夫と言えば大丈夫」
「でも、クルクル切るの、雰囲気あるから、好きかも」
「――――……絶対買お」
オレを見つめてから、クスクス笑って玲央が言う。
「あれ? 買うの決まりなの?」
「決まり。可愛いから」
……ん? 可愛いから?
首をかしげると、「クルクルいっぱい切っていいからな」と笑われる。
クルクル切るのが可愛いってこと?
会話についていけずに、玲央を見てると。
「ああ。なんか、そういうの楽しそうにやってそうで、優月が可愛いって思っただけ」
クスクス笑って、玲央がオレを見つめる。
ああ……もう……ていうかもう……。
キュンってするんだよう、玲央ー……。
……玲央の可愛いって、ストライクゾーンがめちゃくちゃ広いなぁ。不思議……。と思いながらも、胸が痛い。
「あ、さっき優月、何か言いかけたよな?」
切り終えて、オレを見つめてくる玲央に、ん、とさらに言葉に詰まる。
言いたい言葉が決まってたわけじゃないのに、玲央、て呼んでしまってだけなんだけど。
「……えーと……」
「ん?」
「……んー…………」
「うん?」
玲央がオレの言葉を待って、じっと見つめてくる。
「……玲央の言うことってさ……」
「ん」
「……胸が痛い……」
「ん??」
きょとんとされて。
……あ、ちょっと可愛いなんて思うと、余計胸が痛い。
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