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第583話◇
「胸が痛いって何?……とりあえず、座ろっか?」
クス、と笑いながら、玲央がピザを持って、歩き始める。
一緒にくっついていって、隣に座る。
「はい」
言いながら、玲央がオレのお皿に、焼けたばかりのピザを置いてくれた。
「ありがと」
お礼を言うと、玲央がまたオレを見つめて、「それで?」と聞いてくる。
「胸が痛いの?」
「……ん……あの……」
「ん」
ちら、と玲央を見ると。
――――……めちゃくちゃ優しい顔でオレを見ている。
「……よく分かんないんだけどね」
「ん」
「玲央が、オレとずっと居たいみたいなこととか、ずっと先に一緒に何かする話とか……普通にしてくれるとね」
「うん」
「――――……胸が苦しいみたいになるんだよね……」
「……あぁ、そういう意味……」
意外な答え。玲央も分かるのかなそういうの。……って失礼??
でもなんか、玲央は、きゅんてさせる方な気がして。
「意味わかる? 胸の奥がきゅーってするっていうか」
「分かる」
クスクス笑って、玲央がオレを見つめてくる。
「優月が可愛すぎて、どーしようかと思う時、よくあるから」
「――――……!」
……ていうか。
……それですよ、それ……。
玲央って、もうその……
天然で、ど、がつくほどの、タラシさんですよね……。
「玲央ってさ……」
「うん?」
「ホスト、やったら、すぐナンバーワン、だと思う」
「……急に何それ」
可笑しそうに笑って、玲央が「食べよ、冷めるから」と言う。
「何で急にホスト?」
「だって、ホストって、相手をきゅんてさせてれば、人気出るでしょ?」
「……うーん、それだけじゃないと思うけど」
「だって、玲央は黙ってたってカッコいいから、顔だけだって来ると思うし。でもって、しゃべったらもう、そんな感じってさ」
「そんな感じって……」
笑いながらも、玲央は、ジャガイモのピザを一切れ食べ終わって。
「うまいよ、これ。食べな?」
オレにそう進めてくる。促されるまま、食べ始めると。
じーと見つめられてて、「ん?」と聞いたら。
「……可愛い、食べ方。もぐもぐ食べてるだけで可愛いって、ほんと何?」
笑み交じりの優しい声に、ぐ、と喉が詰まりそうになる。
だからね、玲央さんってば。それだってば。
もはや。ちょっと泣きそうになりながら、玲央を見ると。
「思うんだけどさぁ。オレがホストなんかやったって、優月以外にはこんなこと言わないし、絶対、ナンバーワンになんかならないと思うけど?」
「……顔だけでなるから大丈夫」
「大丈夫って……なんの大丈夫? つか、オレ、ホストなんてやっていいの?」
「え」
「嫌じゃないのか?」
玲央はクスクス笑って、オレを見つめてくる。
「……嫌」
「だよな?」
ぷ、と笑って、玲央が頷く。
「――――……でも絶対ナンバーワンとれちゃうと思う」
「まだ言ってる……て、この話、何からきてたんだっけ?」
「ん? ……ええと……」
「うん?」
「……あ、玲央のセリフがね、いっつも胸が苦しくなっちゃうから、ホストとか向いてるねっていう……」
「つか、ほんとになんの話だよ」
クックッと笑って、玲央は、オレの手に触れる。
「優月にしか、言ってないよ」
「――――……」
「他の誰にも、こんなようなこと、言ってないから、オレ」
「――――……」
「だからホストとか無理。優月にしか言えないし」
きゅん。
……って、心臓の奥の奥の方が、鳴りまくってて。
だから、もう、全部全部にときめいてて。
やっぱり、苦しい。
顔の熱が、ほんと、上がっちゃうし。
玲央が好きすぎて、本当に、困る位。
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