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第584話◇

 なんかもう。  玲央とこうなるまで、胸がきゅうってなって、苦しくなるなんて思った事もなかったのに。今もう、ヤバいくらい。 「……あ、オレ、ホストになってほしいんじゃないよ?」 「分かってるよ」  ぷ、と玲央が笑う。 「玲央みたいにカッコよくて、カッコいいセリフが言えたら、すごそうだなーって、思っちゃったの」 「……オレ、すごい褒められてる?」 「うん。……いっつもすごいなって思ってます」 「あ、そう……てか、なんでたまに敬語になるの?」  クッと笑って、玲央がオレをチラ見する。  なんかすごいなと思う時かなあ。自然と出てしまう。 「じゃああれだな、オレは優月だけもてなすから。家の中でホストってことで、いいかな」 「うちの中でホスト?」 「うん。いつでも。優月だけを、おもてなし、な?」 「……オレの心臓が持たないから、おもてなしはしなくていいよ? いつも通りで、もう十分だから」 「そう?」 「うん、ほんと、いっぱいいっぱいだから」  うんうん、いっぱい頷きながらそう言うと、玲央がまた笑う。 「まあ……オレも優月が可愛くて、しょっちゅうそうだからお互い様って感じだな」 「お互い様……かなあ?」  玲央から貰うドキドキとかの方が、ずっとすごいと思うんだけど。 「なあ、優月、今度ピザパーティする時、この二つの味作る?」 「入れる、めっちゃおいしい」 「ん。やっぱり、ジャガイモのはマヨネーズがうまいな」 「うんうん、だね。シラスはもっと乗せても良いかもだね」 「ん」  ピザにのせたら美味しいものを玲央とめっちゃ挙げながら、食事を終えた。 「小さいピザ生地二枚だったから、ちょうどよかったね。美味しかった」 「だなー。でも普段よりは結構食べたろ」 「うん、そーかも。おなかいっぱいかも」  お腹をなんとなくさすると、なんだか玲央がとっても楽しそうな顔で、オレのお腹に手を置いてくる。 「……で……出てる??」 「ん?」 「おなか……」  言うと、玲央が吹き出して、違うよと楽しそう。 「腹が出てるか確認したんじゃないよ。出てるの?」  ぴろ、とめくられて、ひゃぁ!と声を上げてしまう。 「――――……」  しーん。と、二人で見つめあう。  なんか。急に……。  玲央が、また雰囲気……少し違うような。  服のめくられたお腹に、玲央が、する、と直に触れる。 「……っ……や……」  くすぐったい……。  ぎゅ、と瞳を閉じると。 「――――……優月……ウエスト、綺麗だよな……?」   すり、とおなかというか、脇腹というかを、なんか……すごく、やらしい感じで撫でられて、ゾクゾクするし、ドキドキで心臓が壊れそうだし。 「……っっ」  ひーえー……っ!!  更にぎゅう、と目をつむったら。  クスッと笑う気配がして、ちゅ、と頬にキスされた。  オレが、ゆっくり、瞳を開けると、めちゃくちゃ優しい瞳が目の前にあって、それがさらに緩む。 「そうやってすぐ目ぇつむっちゃうと、何されても文句言えないけど、いいの? 優月」 「――――……」  そんな風に言われて、優しく笑われて。  ボンッと火が出るみたいにオレは、真っ赤になった。

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