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第585話◇

  「また真っ赤……」  玲央は、ちゅ、と頬にキスしてくる。  クスクス笑いながら、脇腹から背中に優しく触れる。  自然と上向くと、優しく唇が触れた。 「……くすぐったい」  言うと、玲央はまた少し笑って、オレからそっと手を離した。 「このまま触りたいけど……アルバム、見るんだよな?」 「……見たい」  うんうんと頷くと、じゃあ片付けよ、と笑む。 「オレは、オレのより、優月のアルバムが見たいけどなぁ」  お皿を片付けながら、玲央がしみじみ言う。 「今度オレのマンションに行ったらね?」  ふふ、と笑ってそう答えながら、ふと思いついて、スマホを手にした。 「……ちょっと待ってね」 「ん」  家族のトークルームに、「昔の写真スマホに入ってたら送って?」と入れてみてから、玲央の隣に並んでせっせと片づけ。 「誰か持ってたら送られてくるかもだけど……」 「あるといいな。生まれたばっかりの優月とか、すげー見たい」 「……え、そんなにそこ、見たい?」 「うん、すげえ見たいな……ていうか、全部見たい」  何だかすごく楽しそうな玲央に、そんなに期待されるほど、オレの写真良いのとか面白いのあったかなと、不安になってしまう。 「……普通だと思うけどな、オレ……」 「絶対優月っぽいと思うけどな」 「……赤ちゃんの時から??」  不思議に思いながら玲央を見上げると、玲央は、すごく楽しそうにオレを見下ろして。 「赤ちゃんの時から、優月って感じがしてそうで。……ああ、髪の毛あった?」 「髪の毛? あ、生まれたての時?」 「そう」 「なかった。なんか産毛みたいだったって、よく笑われてたし。なんか一才の誕生日の時も、なんか艶々してた」  玲央がじー、とオレを見つめて、またクスクス笑い出す。 「……もしかして、今のオレで、つるつるの顔想像してたり……」 「してた」  クックッと肩を揺らして笑いながら、そっぽを向かれる。 「今とは顔違うし……っオレで想像しないでよー」 「産毛の優月、絶対可愛い……」  とか言いながら、めちゃくちゃ笑って、食器も流してくれないし。 「もー、玲央ってば。 ていうか、玲央の赤ちゃんの時は?」 「あ、オレ生えてた。なんか黒々してた記憶がある」 「何で、そんな……。そこくらい、髪の毛ない、可愛くて面白い玲央でいいのに」  そう言うと、もう無理、みたいな感じで、玲央がまた笑う。 「ちょっと、今から優月のマンションいこっか」 「いいよ、もう今日はー」  むむむむ。  赤ちゃんの写真抜いておこうかな、もう。 「いつ行こうかな、優月んち。早くいこうぜ、早く」 「そんなにノリノリだと行きたくないんですけど……」  言うとますます笑ってる玲央。  オレの赤ちゃんの頃の写真見てもしょうがないと思うんだけど……と思ったけど、そういえば、オレも今見たくてしょうがないから、お互い見たいのかなと思うと。  玲央がそう言ってくれるのは、嬉しいなとも思ったりはする。  ……でも完全に産毛しかなかったような……ツヤツヤしてたよなぁ、オレ。  ううん、この調子だと、めちゃくちゃ笑われるのでは。 「別にバカにしてないよ、可愛いだろうなーと思ってるだけ」  まだ笑いながら、フォローを入れてくる玲央に、苦笑いしか浮かばないけど。 ――――……あ、そうだ。いつ、で思い出した。 「そうだ、玲央、オレ、水曜日ご飯食べに行っていい?」 「ん? いいよ。誰と行くんだ?」 「智也と美咲とご飯食べに行こうってこないだから言ってて」 「明後日か。ん、いーよ」 「玲央はその日忙しい?」 「あー、なんかさっき勇紀から、水曜日がどうとか入ってた。あとで見てみる」 「うん」 「じゃあ明日は絵描いて、明後日はそれで……木曜、優月んとこ行けるかな」 「……そんなに至急じゃなくていいのですけど」  むむむ、と思いながら言うと、玲央はもう、ずーと、楽しそうに笑ってる感じ。  ……その感じは、大好きなのだけど。  

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