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第587話◇

「優月、コーヒー。こっち置く? 今飲む?」 「飲むー」  こぼしちゃうと困るから、アルバムを脇によけて、玲央からコーヒーを受け取る。 「ありがと」 「ん。……どこまで見た?」 「まだ赤ちゃん。三ヶ月くらい。笑ってる写真が出てきて、可愛いよー」  言いながら、コーヒーを一口。 「美味しい」 「ん」 「赤ちゃん玲央の写真、いっぱいだね」 「アルバムの写真撮ったの、ほとんどじいちゃんらしいよ」 「え、そうなの?」 「うち、両親ほんと忙しい人達だったから、育児は親じゃなかったし」 「そうなんだ」 「じいちゃんは、色々やってはいたけど割と家で仕事しててさ」 「……だから、玲央は、希生さんと仲良しなんだね」 「仲良いって感じじゃないけど」  玲央が苦笑いを浮かべるげと、オレは、ふふ、と笑ってしまう。 「仲良しだよ。なんか似てるし」  「あんま嬉しくはないんだよな、それ」  クスクス笑いながらそんな風に言うけど。  玲央が希生さん好きなのは分かるから、そんな玲央が好きだなあと思う。 「希生さん、写真上手だね。もともと写真撮るのとかも好きだから、蒼くんの写真とかも買ってた感じなのかな」 「絵とか写真、好きだと思う。じいちゃん家、すごい飾ってあるから、今度行った時、見てみな?」 「うん。楽しみ」  そうだ。週末、希生さんのところに行くんだ。希生さんに会うのは楽しみだし。写真や絵を見れるのも楽しみだけど。  こないだの感じだと、すごく優しくて。認めてくれそうな、そんな感じ、だったけど。  うーん……。玲央みたいな赤ちゃん。  希生さんにとったら、ひ孫……。ほんとはほしいんだろうなあと。  またちょっと思ってしまうけど……。  でも、これを考えても仕方ないんだって、すぐに思おうとするオレも、居るのだけれど。 「――――……」  なんだか、どうしようもないことを、ぐるぐる考えてしまっていたその時、ちょうど、ぴこんぴこん、とテーブルのスマホが音を立てて、何度か震えた。  続けての着信に、マグカップとともに立ち上がってスマホを見ると。家族のトーク画面に、母さんからだった。  開くと、見覚えのある、産毛の頃の、オレの写真……。 「あ、写真……」  思わず、笑ってしまいながら言うと、すぐに玲央が立ち上がって、オレの所に歩いてきた。 「見せて?」  玲央はクスクス笑いながら。 「そんなに見たい?」  オレも、ぷぷ、と笑ってしまいながら。 「はい」  差し出すと玲央はすぐに覗き込んでから。  ふ、と顔をめちゃくちゃ緩めた。 「……何これ」 「ん?」 「拝みたくなるんだけど。……天使なの?」 「――――……」  いや、オレも。玲央の写真見てそう思ったけど……。  天使なのって聞かれても。  思った瞬間、ぷはっと笑ってしまった。 「拝まないでよ……」 「他のも見せて」  クスクス笑ってしまってると、楽しそうな玲央に、スマホを奪われた。

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