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第590話◇

「……優月、泣きすぎ……」  よしよし、と頭、撫でられて、抱き締められる。 「…………だって……今だって、玲央とが一番幸せだから居るのに……そんなこと言われたら泣いちゃうよ……」  鼻を啜ってると、玲央が苦笑しながらオレを少し離して、はい鼻かんで、とティッシュを渡してくるので、鼻を噛んでごみ箱にティッシュを捨てた。少し落ち着いて、ふぅと息をついたら、また抱き寄せられた。 「……ほんと、可愛いな……」  頭を撫でられて、そのまま、抱き締められたまま。  何もしゃべらず、しばらく過ごす。 「――――……」  しばらくして、少し体を起こされて、顔を覗き込まれる。 「泣くの収まった?」 「……うん、ごめん」 「いーよ。可愛いし……蒼さんとかに、また泣かせたのって言われそうだけど」 「……別に、嫌で泣いてるわけじゃないから……絶対平気だよ」  ふふ、と笑いながら玲央を見つめる。 「……優月が泣くとさ」 「うん?」 「なんか、オレの中も、綺麗んなる気がする」 「……ん……どういうこと?」  聞き返すと、玲央は「分かんないか」と苦笑して、またオレを抱き締める。 「……そんな気がするってこと」 「……そうなんだ……」  よく、分かんないけど。綺麗になるんだ……?  ふうん、と、なんとなく嬉しい気がして、小さく頷いていると、笑いながら玲央が、オレの頬にキスをした。 「優月がオレのことで、泣いたりしてくれるとさ。大事に思われてる気がする訳」 「……大事だよ?」 「ん。……なんかさ。泣いてくれるの見てると。なんていうかなぁ……」  玲央は、ぷにぷにとオレの頬をつまみながら、じっとオレを見つめて。 「んー……優月が大事だって思うオレで居ようって思うからさ。なんか、色んなことを良い方に、考えていくようになる気がして」 「……」 「……意味分かるか?」  両方の頬を、両手でぷに、と挟んで、玲央が笑いながらオレを見る。 「だから、結果的に……オレも綺麗になるような?」 「……うん。なんとなく、分かる」  そっかー。  ……オレが、玲央を大事に思うと、玲央は、綺麗になっていくのかぁ……。  頭のなかで、そんな風に考えて、ふむふむ、と頷いていたら。  なんだか、すごく嬉しくなってきて。  ふふ、と笑いが零れた。 「……あ。何笑ってんの。変なこと言ってるとか、思ってンの?」  玲央が、ちょっと……多分照れてるんだと思うけど。  む、と少し口を尖らせてる。それが。  すっごく、可愛い。  まだオレの両頬に触れたままの玲央の手をそのままに、少し玲央に近づいて、そっと、唇を重ねた。 「……玲央、大好き」  そう言うと。すぐムッとしてた顔が解けて。  愛しそうに。そう思ってくれてるんだろうなっていうのが分かる、そんな顔で、笑ってくれて。  引き寄せられて、唇が、重なってくる。  ほんとに大好きだよ、と、思いながら、キスを受ける。

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