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第592話◇

 それから玲央のアルバムをまた開いた。  玲央が可愛い。  ひたすら可愛い。尊い。よく玲央に思うけど、こういうのをそう呼ぶんだと思う。 「なんか、玲央の写真、全部オレのスマホに保存したい……」  楽しそうに無邪気に笑ってる、可愛い赤ちゃん。しかも、少しずつ大きくなるにしたがって、玲央の面影がより出てくる。玲央の面影があるのに、なんかまぁるくてフワフワしてて、可愛い。 「……だっこしたい」  さっきも一人で思っていたことを遂に声に出して言ってしまったら、ずっと、ニヤニヤ面白そうに笑ってた玲央が、ははっ、と声を出して笑い出した。 「させてあげたいけど……無理だな?」  クスクス笑われて、よしよしと頭を撫でてくる。  可愛くて、可愛すぎて、あちこち進んだりまた戻ったりしながら見終わって、また新しいアルバム。  それまでも、ちょこちょこ別の赤ちゃんたちが出てきてはいたのだけれど、二歳くらいになったこのアルバムから、同じ子たちが出てきたような気がする。 「この子たち、よく会う子だったの? 可愛いー」 「ん?」  玲央が、ひょい、と覗き込んできて、少し見ていたけれど。 「あー……それってさ」 「うん」 「見たことあるなーとか思わないか?」  玲央が意味ありげに言って、可笑しそうに笑う。 「え?」  見たことあるって。オレが知ってる子なの? でもそれってすごく限られてくる。 「……それさぁ、幼稚園入る前に、遊びましょうっていう集まりの時のなんだよな。そのままそいつらと、幼稚園に進んでんの。って言えば、分かる?」  玲央がすっごく面白そうな顔でオレを見つめてくる。 「え。え、それってもしかして」  大学に居る、玲央と幼稚園から一緒の皆って。  目の前の可愛いちびちゃんたちに、思い浮かぶ顔を重ねていく。 「……勇紀?」  髪の毛茶色のホワホワした、すっごく可愛い子を指して言うと、そうそう当たり、と玲央が笑う。その後、甲斐と颯也も発見。稔はこの時は同じクラスじゃないのかも、覚えてないけど、と玲央が笑う。 「でもその内、絶対あいつらも出てくるよ」 「楽しみすぎる……」  皆も、超可愛い。  特に、勇紀は割とそのままというか、今もカッコいいけど多分可愛い系でもあるから、面影がかなりあるけど。それはそれでまんま、とってもとっても可愛いのだけど。  結構クールな颯也と甲斐が、赤ちゃん……!  まあそれ、玲央もだけど。  ……なんて可愛いんだろう。 「……はーもう、オレ、今日ほんとに幸せ」  そう言うと、玲央は可笑しそうに笑って、「それは良かった」と言いながら、オレが抱えてたアルバムを受け取った。それを脇に置いてから、玲央がオレの腕を引いた。至近距離から見下ろされて、ふ、と瞳が優しく緩んだ。 「……もう今日は、終わりにしてさ」 「ん?」 「……そろそろ、こっちのオレ、見たら?」  カッコいいセリフを、さらっと言って、玲央の唇がオレの唇に触れてくる。  う、わ……。  ……もう、赤ちゃんの面影みたいなのは、一瞬で消えちゃった。  今の玲央には。  ドキドキしか感じない。

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