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第609話■番外編■クリスマス2
「雪積もるかな?」
玲央が言うので、空を見上げるけど。
「積もらなそうかな。フワフワしてるもんね」
「まあ、そうだな。積もらないか」
「うん」
「んじゃあさ、優月」
「ん?」
「今度、雪がいっぱい積もってるとこ、行く?」
「うん、行く。どこ?」
「どっか温泉とか?」
「行く行く」
「あいつらも誘うか」
「勇紀たち?」
「ん。まあ部屋は別だけど」
クスクス玲央が笑う。
「皆で雪合戦とかして、かまくらの中で鍋出来るとこ行ってー」
「雪ダルマ作りたい」
オレが言うと、玲央はふ、とオレを見て笑う。
「優月は、雪ウサギ作って。すごい似合うから。可愛いやつ」
「いっぱい作って、並べる―」
「似合いすぎる……」
何を想像したのか、玲央はおかしそうに笑いながら、オレを見てる。
「じゃあ約束な?」
「うん。約束」
「いつ行こうか。大学休みになったら行く?」
「うん。オレはいつでも。今週とかでも全然」
ていうか、もうすぐにでも行きたい。
と思ってから、あ、と気づいた。
「年賀状書かなきゃいけないから今週は無理だった」
そう言うと、玲央は「年賀状書くの?」とオレを見る。
「書かないの?」
聞くと、玲央は「書くと思う?」と聞いてくる。
「……書かない、かな?」
「書かない」
顔を見合わせて、ぷ、と笑ってしまう。
玲央らしい気がする。
「あーじゃあ、優月には書こうかな」
「年賀状?」
「うん」
「いいの? 嬉しい」
「貴重だよ、マジで」
うんうん、そんな気がすると思ってコクコク頷いてると。
「手渡し??」
と聞かれて、少し考える。
「……なんとなく、届いた方が嬉しいような……送って?」
言ったら、そうだよなと、玲央が悪戯っぽく笑う。
そんな話をしている間に、どんどん人が増えてきた。
青いイルミネーションが見えてくる。
「玲央、綺麗だよ」
「ん」
早く行こうと手を引くと、玲央はクスクス笑う。
「あ、そうだ。後でデパート行こ」
「ん?」
「勇紀たちとクリスマスパーティしようってさっき言っててさ」
「うん」
「プレゼント交換しようって話になったから。優月、そういうの好きそうって、勇紀が言いだしてさ」
「好きー!」
わーい。なんだかめちゃくちゃテンションがあがって、そう言ったら、あ、やっぱり? と玲央が笑う。
「じゃあ、あとで買いに行こ」
「うんうんうん」
めちゃくちゃ頷いてると、玲央がふ、と笑って。一瞬、手が解かれたと思ったら。玲央の手がオレの頭をよしよし撫でてきて。
「ほんとかわいーな」
と、囁かれる。
いきなり間近で言われると。
いつまで経っても慣れないオレは。また、顔、多分一気に真っ赤。
「さっきまで冷たかったのになー?」
気づいた玲央がクスクス笑いながら頬にスリスリ触れてくる。
今度は玲央の手がちょっと冷たく感じるから不思議。
「なんか色々楽しみだよな」
また手を繫いで歩きながら玲央が言うので。
「楽しみだね」
と答えると。
玲央が少し手を強く握ってくれて。
なんかほんとに幸せだなあ。
と。思った。
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