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第611話■番外編■クリスマス4

 それぞれが買ってきてくれた食べ物や飲み物をテーブルに並べて座った。  クリスマスソングをかけて、とりあえず食べちゃおうってことになって、食事開始。  お酒は誰も飲んでないのに、すっごく皆楽しそうで。まあでっかい声を出してるのは、稔と勇紀だけど、それに皆も笑うから、とっても賑やか。  大分食べ終わった頃、「あっ! しまった!」と言って勇紀が立ち上がった。 「忘れてたー! まぁいっか、今からでも」 「なんだ??」  玲央が聞くと、ちょっと待ってて、と荷物のところに行って、何かの入った袋を持ってきて、テーブル脇で立ち止まる。 「どれが誰に似合うかなあ……とりあえず稔はこれね」 「げげ」    受け取ってそんな声を出しながらも、稔は、すぐにそれを頭につけた。  スノーマンが万歳してるカチューシャ。 「嘘みたいに似合うな、お前。……ていうか、どれがって、まさか」  甲斐が引きつってると、「全員分あるよー」と、勇紀が笑う。 「オレはこれにしよ」  そう言って、勇紀がつけたのは、クリスマスツリー。しかもスイッチ入れて、ぴかぴか光ってるし。  もう、おかしくて笑ってしまう。 「え、オレいらねえけど」  颯也がそう言うと。 「つまらねえこと言うなよ。ほれほれ。甲斐と颯也でどっちか選んでいいよ」  二人に渡したのは、トナカイとサンタのカチューシャ。  すっごく嫌そうな顔をしながら、でも甲斐が渋々トナカイを選んだ。 「つかオレこれ……?」  すごく嫌そうに颯也がサンタをつけさせられているのを見ながら、オレと玲央は何かなあとちょっとわくわく。  ふと玲央に視線を向けると、見るからにうんざりしてて、笑ってしまう。  出てきたのは、意外と普通な。  サンタの帽子二つ。ふわふわのついたもこもこした手触りの。受け取って、隣の玲央に渡そうか迷う。……だって、顔が嫌がってるんだもん。  笑ってしまいながら止まっていると。 「優月ひとつ貸して。おいで?」 「うん?」  玲央の手に帽子を一つ渡すと、玲央がかぶるところを少し広げて、オレの頭にすぽ、とかぶせた。  かぶせたオレを見た瞬間、玲央がクスッと笑う。  つけた帽子やオレの髪とか整えながら。  な……なんか玲央、可愛いとか言いそうな顔してるけど……皆居るけど……。少しドキドキしてると。 「待て待て、お前、めちゃくちゃ可愛いって顔で、優月を見てんな」 「……ん?」  稔の言葉に、玲央がチラッとそっちを見やる。  無言の視線に、稔が苦笑い。 「……何その、思ってるけど何が悪いんだ的な空気は……」 「つか、可愛いだろ、優月」  言いながら、玲央がオレに視線を向けなおして、優しく微笑む。 「――――……」  やっぱり言った、玲央……。  ……なんか、恥ずかしい。  玲央は可愛いって思ってくれてるみたいって、最近ちょっと思うのだけど。……ひたすら言ってくれるから。  ……でも、別にオレそんな可愛いわけじゃないし、ほんと人の前で言われるほど可愛くないよーと、思ってしまう。  顔、熱い……。  思わず俯くと。 「お前、なんかもう、溶けてんな……」 「溶けてるよね。ていうか優月、こんなのにひたすらどろどろ甘やかされてたら……」  稔の言葉に答えて、勇紀がそこまで言って止まって、クスクス笑いだす。 「……もっと可愛くなるかもね」  何言ってんの、勇紀。  そんな風に思いながら勇紀を見つめると、 「可愛いって言われて育つと可愛くなるって言うじゃん。玲央みたいなやつにずーっと可愛い言われ続けてたらさ」 「ていうか、そういや優月、会った頃より絶対そうなってる気がする」  勇紀の声に稔も言い出し、「それはあるかもな」と颯也と甲斐迄頷きだしてオレを見てくると、めちゃくちゃ恥ずかしいのに、玲央は。 「つか、変な目で優月見るな」  とか意味の分からないことを言って、オレの頭を抱えて、隠す。  皆が多分固まってるのが、雰囲気で、分かる。  そのすぐ後、皆が笑って玲央に一斉にツッコんだ。   (2022/12/27)  ……また過ぎてる。いや気のせい ……じゃない。 もう少しお付き合いください(^^;♡

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