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第627話◇
少し顔が熱いのが引いてから、んーと、考える。
何だか自分のことだけど、改めて言われると、ちょっと困る位、な気がしてきた。
「……玲央の前では、そこまで言ってない、と思うんだけど」
「ほんとか?」
「……どうだろ……分かんないや。言ってるかな……」
手の甲で口元隠しつつ、とりあえず否定しようと思ったのだけれど。もしかして、オレいつも、あんな感じで玲央に、好きとかカッコいいとか、ずっと言ってるだろうか……? 照れくさいから言ってないような気もするんだけど、もうなんか、自然と言っちゃってるかもしれない……。
うーん、と考えていると、蒼くんは笑いながら、オレを見つめる。
「言葉にしてなくても、そういう顔、してそうだよな」
「…………」
そう言われてしまうと、もう、そうな気がしてしまう。
だって、好きだし……。
「……これって、なんか、あんまり良くないかな?」
少し心配になって、ちょっと俯いたまま視線だけあげて、蒼くんに恐る恐る聞いてみると。
「良くないってどういう意味で聞いてる?」
「……重い、とか」
「まあ、重いっていう奴も居るかもしれないけど……」
今、蒼くんに並べて言われたら、かなりオレって、すごく玲央を好きすぎる気がしてきた。
少し黙って考えていると、クックッと蒼くんは笑いだした。
「恋とかがめんどくさいって言ってた奴が、優月みたいな奴と付き合ってんだから……もう、気にしなくていいんじゃねえの?」
「……」
その言葉と笑顔に、縋る気分で蒼くんを見つめていると。
「心配?」
「……うーん……なんか、蒼くんに言われてみると……言いすぎかなぁ?」
そう言うと蒼くんは、クスクス笑い出した。
「別にオレ、お前に心配させようと思って言ったんじゃなくて、ただからかっただけなんだけどな?」
「うん、わかってるんだけど……なんか、そう言われてみたら、ってちょっと考えちゃった」
「考えなくていいと思うけどって言ってもダメか? んー……ああ、あと、さっきの質問も」
「?」
「慣れてないと嫌かってやつ」
「……うん」
「どれもこれも、嫌だと思ってる奴と付き合い続けるなんてしない、てことで大丈夫だろ?」
ふ、と笑いながら、蒼くんが言い切る。
「特に、玲央みたいなモテる奴が、無理して誰かと付き合うなんてしないだろ」
「……うん。そ、か……」
そう言ってもらえると、そうかも、とは思う。
思うけど……別れるほどじゃないけど、ちょっと嫌、とか? そういうのがいっぱい積もっていったら、結局別れようってことになっちゃったりなんか……?
もうオレ、玲央のことになると、結構きにしいなのかもしれないと、色々もやもや思っていたら。蒼くんが「じゃあさ、優月」と改めて名を呼んできた。
「うん?」
「よーく考えてみな?」
「うん……?」
まっすぐ蒼くんを見つめ返すと。
「玲央はさ、お前と居て笑う?」
「――――……」
「いつもお前と居て、どんな顔、してンの?」
「どんな顔……」
そう言われて、思いだす、玲央の顔は。
「ん、笑う。……楽しそう、だと思う」
優しい笑顔が一番に浮かぶ。
「なら平気だろ」
「……そっか」
なんだか、オレってば、すごく現金だなとも思うのだけれど、色々気になってぐるぐるし始めたことが、ふんわり、溶けてくみたいな気分になって……。
「……ありがと。蒼くん」
自然と笑顔でそう言ったら、蒼くんは、ふ、と微笑んだ。
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