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第628話◇

「ありがとって言うけど……悩ませたのもオレだけどな」  そんな風に言って、蒼くんはニヤニヤ笑ってる。  そう言われてみたらそうなのだけれど、でも結局は、玲央の笑顔が頭に浮かんだのは蒼くんのおかげだし。それでオレは嬉しくなってる訳だし。  いつも蒼くんはそんな感じにしてくれる。 「まあ、あれだな。その様子だとうまくいってそうだよな」  笑いながら蒼くんは言う。 「心配はしてなかったけど」 「あ、してなかったの?」 「どうしてるかなとは思ってたけど、絵と顔見たら、大丈夫だろうなって感じ」 「……いつもありがと」  そう言ってから、蒼くんに聞いてみたかった、あることを思いだした。 「あのさ、蒼くん。もういっこ、相談というか……聞いていい?」 「なんでもどーぞ」 「……オレずーっと、気になってることがあってね。玲央は、良いって言ってくれるんだけど」 「ん」 「いつもさ、蒼くん、オレと居ると、全部払ってくれるでしょ」 「ああ」 「それって、どうして?」 「どうしてって……優月に出させる意味がよく分かんねーけど。年下だし、弟みたいなもんだし。絶対要らないって言ってきただろ」 「うん」 「なんか要らないって言ってんのに、お前、あれやこれや買ってくるし……」  ぷ、と笑いながら、蒼くんはそう言う。 「蒼くんはそう言ってくれるし。なんかもう、ずっと昔からだし」 「だからオレは、それでいいよ」 「……玲央もさ、そんな感じなの。でもね、玲央は別にお兄ちゃんって訳じゃないし、年も一緒だし……」 「ああ。また余計なこと考えてる訳か」 「う……余計なことかもしれないんだけどさ……玲央は良いって言うから、毎回払うよって言うのも面倒くさいかなって思って……」 「ん、かなり面倒くせーな」 「……っ。……そう思ったから、オレ、自分の中で決めたのね」 「何を?」 「買ってもらった分、何かお礼すればいいってことにしよって」 「……それは、オレに諸々色んなもの買ってきたのと一緒?」 「……そんな感じ……」 「子供ん時から、あれやこれや要るもの要らないもの……」  何を思い出しているのか、クッと笑い出す蒼くん。オレはまた、蒼くんが笑いやむまで、待ち時間。かと思いきや、「いいよ、聞いてるから」と蒼くんは笑いながら先を促す。   「でもね、買ってもらった分をとか思ったけど……なんかオレの知らないところで洋服とか香水とか買ってくれてて……オレ、そういうの金額、全然分かんないし」 「ああ、なるほど。……つか、あいつ、希生さんの孫なんだから、半端ない金持ちだろ」 「そうなのかも……。マンションとかすごいの。ホテルみたいな感じで……」  ……って。そういう話をしたいんじゃなかった。えーと……。  考えていると、蒼くんが笑った。 「多分、優月が欲しいものを何買っても、困ることはないと思うけど。そう考えたら? 玲央が良いって言ってんだろ?」  考えて、玲央を思い出して、うん、と頷く。 「良いって言ってくれてる」 「でも気になんの?」 「……ほんとは、やっぱり、気になる、かなあ……」  蒼くんは、んー、と言いながら、なんか笑ってる。

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