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第629話◇

「でもさ、優月」 「ん?」 「玲央は、優月に限らず、昔からそうなんじゃねえの?」 「あー、うん……なんか今までも、出してきたしって言ってた」 「だからそう言う感じなんだろ。……少し世界が違うよな?」 「……少しじゃないかも……」  言うと、蒼くんは苦笑しながら、オレを見て、しばらく考えてから。 「お前の気が済むように、なんか玲央が喜びそうなもの買ってやるってので良いんじゃないか? 金額とかは細かくできないだろうし、それはもう関係なく」 「――――……」  うーん。と、考える。 「なんか、今まで、蒼くんしかそういう人居なかったから……皆、普通に自分のものは自分で買ってたし。特別に奢り、とか言う日も、ほんと、そんな高い金額じゃなかったしさ」 「まあ、分かるけど……」  蒼くんはオレを見つめながら、また苦笑い。 「とりあえず、玲央みたいな感じで生きてきてる奴に、必要ないんだろうな、その心配。優月のを払うの当たり前みたいな感じじゃねぇの?」  そう言って、蒼くんはなんだか面白そうに笑ってる。 「お前は、それ、いつから考えてんの?」 「……結構最初から? でも、あんまりずっと言っててもなって思って、今は言ってない」 「言わなくていいと思うよ。そこら辺は、結構価値観が違うとこかもな」 「マンション買ってもらって、とか。しかも、住んでなくて、たまに使うだけとかもびっくりした」 「はは。そっか」 「でも……お金とか、そこら辺だけじゃないかも」 「ん?」 「……なんか、色々、すごく違うと思う、玲央とオレは」 「例えば?」 「んー…。価値観が全く一緒の人なんて居ないとは思うんだけど…なんとなく、似てるなーって人はいるじゃない?  生活とか家庭環境とかさ?」 「まあ、そだな」 「玲央はさ、色んなことが違いすぎて……すごいなーて思う方が多いの。バンドとかもさ、もうあれはちゃんとお仕事だと思うし。週末、曲作ってるとこ見てたんだけど……めちゃくちゃ真剣だった。すごく一生懸命、やってるんだなって、思ったし」 「ん」 「人との、今までの付き合い方とかも、全然、違うし」 「ん」 「……玲央ね、お好み焼きやさん、行ったこと無かった」 「ああ。そうなんだ」  ふ、と笑われる。 「違うこと、いっぱいあって、もうよく分かんないんだけど……」 「ん」 「……でも、一緒に居て、楽しいから…… 人と居るのに、価値観とかって関係ないのかなーって、思ってる」 「ああ。……つか、それが結論?」  クスクス笑われる。「ん?」と聞き返すと。 「価値観が違うから大変、って普通言うところかと思って今聞いてた」 「……あ、そっか。……いや、でも……ずーっと払ってもらうのはどうかなって気にはなるけど……それ以外は違っても、すごいなあってだけかな……」 「結局、すごいし、楽しくって好きってこと?」 「……うん。そう、かも」 「のろけな訳な? 結局」 「…………」  のろけ……。  面白そうに笑う蒼くんに、あれ? そうなの? と思うと、急にまた恥ずかしくなる。  あれ? オレってば何話してても結局それになるのかな……?    

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