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第634話◇
蒼くんが、駐車場に車をとめて、鍵を開ける。
蒼くんもオレも、ドアを開けて外に出た。
「おかえり」
玲央がオレの隣に立って、そう言ってくれる。
「ただいま」
そう答えると、玲央も嬉しそうに笑ってくれて、もうオレは、それだけですごく、嬉しい。玲央のとこに、帰って来たなーって、すごく思う。
「蒼さん、こんばんは」
玲央が言って、あとに続くみたいに、皆も挨拶してる。
「こんばんは。……つか、何で勢ぞろい?」
蒼くんは皆の前に立つと、可笑しそうにそう聞いた。
「オレが下行ってくるって言ったら、じゃあ一緒にって」
玲央もちょっと笑いながら、そう答えてる。
「蒼くん、勇紀と颯也と甲斐、だよ」
「ああ。よろしく」
「オレはこないだちょっと話したけど」
ふふ、と勇紀が笑う。
「優月にキスした振りしたの、面白かったので」
「ほんとに。挨拶しておいた方がいいってことになって」
クスクス笑いながら颯也と甲斐が言って、蒼くんと向き合う。その横で、玲央が、「お前ら……」と苦笑してる。
「ああ、あれか……」
蒼くんは笑いながら、玲央に視線を流して、「しょうがねえよな、あれは」と言ってる。
「まあ……そうですね」
と、苦笑いの玲央が、隣に居るオレを見下ろして、クスクス笑う。
「もう無いから」
「うん……」
あの一連のことは、別にそこまですごく嫌な記憶でもないのだけど、玲央がそういう風に言ってくれるのは嬉しくて、玲央を見上げたまま、笑うと。
「優月、それそれ」
蒼くんが笑いながら、言った。
「それって?」
そう聞くと、蒼くんは笑いながら。
「学校とかでもそうやって、見つめ合ってんじゃねえの?」
「え。あ……」
そう言われてみると、いつも玲央のことは、見てしまってる気はする……。
「何のこと?」
玲央に聞かれて、んーと、と困ってると。
「玲央と付き合ってるとは言ってないのに、実家でも学校でもバレてるって不思議がってるからさ」
「――――……」
「そんな風に玲央のこと見つめてニコニコしてたら、分かるだろ?」
「ああ……なるほど」
蒼くんの、ものすごく簡潔で、分かりやすい説明に、玲央はプッと吹き出す。勇紀たちも、可笑しそうに笑ってる。
「でも、別に、他の人見る時と同じだと……」
言いかけたら「違うって」と、勇紀たちに口々に却下された。
「うるうるしてるもんなぁ、優月」
「玲央、好き好きーって」
勇紀と甲斐に言われて、「そんなことはないと思うんだけど……」と言うと、次は颯也。
「でも優月より、ヤバいの、玲央だからなぁ」
面白そうな顔でオレを見てた玲央が、颯也の言葉に「は?」と反応。
「……優月可愛いなーって顔、ずっとしてるし。ヤバいですよ」
颯也が蒼くんに向かって、そう言って笑う。
「まあバレても問題ないなら良いけど。悪いけど、色々フォローよろしく」
勇紀たち三人にそう声をかけて、三人が頷いてるのを笑いながら見た後、蒼くんは、運転席のドアを開けた。
「じゃあ、これで帰る。玲央」
「はい?」
「希生さんち、多分オレも行くから」
「あ。そうなんですか?」
言いながら、玲央がオレを見下ろす。オレが、そうみたい、と言いながら頷くと、玲央は、クスッと笑って、蒼くんに視線を戻した。
「楽しみにしてます」
「ん。じゃあな」
言った玲央と、周りに居た皆に視線を流してから、蒼くんは運転席に乗り込んだ。オレが運転席側に回ると、蒼くんが、窓を開ける。
「ごちそうさま、蒼くん。ありがとうね」
「ああ。またな」
「うん」
ふ、と笑んで窓がしまって、そのまま、発進。車が見えなくなってから、皆が口々に言った。
「こないだも思ったけどさー、すっごいイイ男って感じの人だよね」
「なんか太刀打ちできなそう。色々」
「ほんとだな」
勇気も甲斐も颯也も、他の人たちから見たら、絶対イイ男の部類だと思うのだけど……。
その皆がしみじみそんなことを言ってるのを聞いて、皆から見てもそうなのかぁと、ふむふむ頷いていると。
「おかえり、優月」
なんだか改めて言った玲央に、頭をよしよしされてしまった。
とたんに、ふわーっと、体温が上がった感じ。
嬉しくなって、うんうんと頷いてると、皆が笑いながら、先行こうぜーと歩き出してしまった。
玲央と顔を見合わせて。
二人並んで、皆の後をついて歩き出した。
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